第7話 俺の体でハーレムでも作る気か?
夜七時五十九分。
予定どおり、屋敷のインターホンが鳴った。
私は鏡の前でネクタイを最後に整える。
「……うん。」
やっぱり、この顔は反則だ。
蓮の端正な顔立ちに、ダークカラーの禁欲的なスーツ。
知的で上品なのに、どこか危険な色気まで漂っている。
まさに――スーツを着た悪い男そのものだった。
玄関のドアを開けた瞬間。
「うっ……!」
濃厚な香水の香りが一気に押し寄せ、私は思わず三歩後ずさる。
ドアの前には、サングラス姿の恒一が気取ったポーズで立っていた。
その後ろには、ずらりと並ぶ美女たち。
フランス語の専門書を抱えた知的なお姉さん系。
ツインテールが似合う甘めの可愛い系。
ライダースジャケットを着こなしたバイク女子までいて、私に向かって投げキスを飛ばしてくる。
「蓮さん、こんばんは♡」
「初めまして♪」
「お会いできて嬉しいです。」
甘い声が一斉に玄関へ響き渡った。
「ちょ、ちょっと近い……!」
圧倒されて後ずさった、その時。
どんっ。
背中が柔らかなものにぶつかる。
振り返ると――
そこには、私の顔をした蓮が立っていた。
オーバーサイズのスウェットをラフに着こなし、片手には食べかけのリンゴ。
だけど、その笑っていない目だけは妙に迫力がある。
「……説明して。」
シャリッ。
リンゴをひと口かじる音が、妙に大きく響いた。
蓮は私の耳元へ顔を寄せ、低い声でささやく。
「俺の体でハーレムでも作る気か?」
その穏やかな口調とは裏腹に、声にはぞっとするほどの圧がこもっていた。




