第5話 彼女探し大作戦
高橋執事の仕事は相変わらず早かった。
ほどなくして、私が注文した新しい服が屋敷へ届く。
黒一色のオーダーメイドスーツが三着。
シルバーグレーのシルクシャツが五枚。
カフスボタンまで、無機質な輝きを放つプラチナ製に総入れ替え。
「やっぱり、男はこうじゃなくちゃ。」
私は革張りのデスクチェアに深く腰掛け、足を組みながら満足そうに頷いた。
さて。
次はいよいよ――蓮の彼女探しだ。
私は蓮のLINEを開き、連絡先を次々とスクロールしていく。
四百人以上も登録されているというのに、
経理部長の藤原部長、
秘書の西園寺さん、
それから私の仕事用アカウント。
……結婚相手になりそうな女性は、一人も見当たらない。
「これじゃ彼女なんてできるわけないじゃない……。」
思わずため息をついた、その時だった。
画面に桐生 恒一とのトーク画面が表示された。
アイコンは相変わらず。
ヨットの上でビキニ美女を両脇に抱え、満面の笑みを浮かべている。
「そうだ。」
私はニヤリと笑い、蓮になりきってメッセージを打ち始めた。
恒一。
今すぐ極上の美女を十人手配してくれ。
今日にでも嫁にもらえそうな子限定で。
送信。
すると、一秒もしないうちに返信が返ってきた。
「???」
その直後、ビデオ通話の着信。
私は慌てて応答した。
画面いっぱいに映ったのは、派手なアロハシャツ姿の恒一だった。
「おい、蓮!」
「お前どうした!?」
「先週まで、あの初恋の人のことでヤケ酒して、胃を壊すほど飲んでたじゃねぇか!」
「えっ?」
驚いた拍子に手が滑り、マグカップが机に勢いよくぶつかった。
初恋の人?
あの、人を見れば皮肉しか言わない毒舌男が……
まさか、片思いなんてしてたの?
私は慌てて咳払いを一つする。
「……コホン。」
「方針変更だ。」
こぼれたコーヒーを拭きながら、平然を装って言った。
「細かいことは気にするな。」
「今夜八時、うちに来い。」
「連れて来るなら、優しくて、気配りができて、人の話をちゃんと聞いてくれる子だ。」
「了解!」
恒一は勢いよく指を鳴らした。
「モデル系も、才女系も、癒やし系も、何でもそろえてやる。」
「でも、一つだけ忠告。」
急に声を潜めると、画面へぐっと顔を近づける。
「お前んちの幼なじみが包丁持って殴り込んできても――」
「兄弟、俺はお前の死体を片づけるところまでは面倒見ないからな。」




