第20話 ずっと、蓮だった
あの夜、私は夢を見た。
十七歳の蓮がいた。
放課後のバスケットコート。
彼は私のポニーテールをつかんで離さない。
腹が立った私は、持っていたコーラを勢いよく彼のスニーカーへぶちまけた。
よりによって、それは世界限定モデルだった。
蓮は三秒ほど固まる。
そして突然、私の手首をつかむと、
熱を帯びたバックボードへ押しつけてきた。
「朝比奈美咲――
お前、覚悟しろよ。」
その感触は、夢とは思えないほど生々しかった。
けれど次の瞬間、
景色は卒業式へと切り替わる。
二十二歳。
桜吹雪と紙吹雪が舞う中、
蓮は私の花束をひったくると、
不敵に口角を上げて笑った。
「お前を、他の男になんか渡すか。」
そして――
一番忘れられない記憶。
私たちの身体が入れ替わった、あの日の朝。
蓮は私のパジャマに顔を埋め、
朝日を浴びた長いまつげが蝶の羽みたいに震えていた。
そのとき"私"の手は、
触れてはいけない場所に置かれていて――
「っ……!」
私は勢いよく目を覚ました。
全身が汗でびっしょりだった。
胸は激しく上下し、
鼓動だけがやけにうるさい。
熱い。
この体が、熱い。
指先から耳まで、
まるで熱がじわじわと全身を駆け巡っているみたいだった。
そのとき、私はようやく気づく。
物心ついた頃から、
蓮はずっと私の人生につきまとっていた。
幼い頃の彼は、
いつも仏頂面で、まるで氷みたいな顔をしていた。
だから私は、
わざと彼の変形ロボットを取り上げたり、
ランドセルの中へカエルを入れたりして、
耳まで真っ赤になって怒る姿を見るのが好きだった。
いつしか言い合いをするのが当たり前になって、
腹が立つたびに、
「もう二度と口なんか利かない!」
そう宣言していたくせに、
半日もすれば自分から話しかけに行ってしまう。
……きっと。
私たちはお互い、
「どうせ離れていかない」と甘えていたのだ。
奏多は、
ショーウィンドウに飾られたガラスの靴みたいな人だった。
完璧すぎて、
触れることすらためらってしまう存在。
でも蓮は違う。
ずっと昔から、
私の心にも、
私の人生にも刻み込まれていた、
消えることのない刺青みたいな存在だった。
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