第17話 ライバルは、完璧すぎる男だった
蓮は、はっと目を見開いた。
驚きとショックと、それから隠しきれない傷ついた表情が、そのまま顔に浮かんでいる。
「……なんで?」
思わず漏れた声は、情けないくらい弱々しかった。
「なんでって?」
私は肩をすくめる。
「最初から好きじゃないし」
「それに、奏多のほうがイケメンだし、お金持ちだし、大人っぽくて落ち着いてるでしょ?」
「そういう人が、私のタイプなの」
わざとらしく言い切ると、蓮の表情がみるみる曇っていく。
……ああ、その顔。
見ていると、妙に楽しくなってしまう。
蓮は悔しそうに唇を噛み締めると、そのまま勢いよくドアを開けた。
そして奏多のところへ――
勝負を挑みに行った。
……いや、正確にはデートだけど。
私は嫌な予感しかしなくて、こっそり後をつけることにした。
待ち合わせ場所で待っていた奏多は、蓮とはまるで正反対だった。
身体に吸い付くように仕立てられたオーダースーツ。
立っているだけで絵になる、余裕と品のある佇まい。
細い金縁の眼鏡が、鋭い目元をほどよく柔らかく見せている。
髪の一本一本まで丁寧に整えられていて、隙がない。
まさに"できる男"そのものだった。
私の姿――正確には、美咲の姿をした蓮――を見た瞬間、奏多はほんの一瞬だけ目を丸くした。
けれど、その表情はすぐにいつもの穏やかな笑みに変わる。
何も言わずにジャケットを脱ぐと、そっと蓮の肩へ掛けた。
その瞬間だった。
「……何、それ」
蓮の機嫌が一気に悪くなる。
「俺の格好がダサいって言いたいの?」
「無理して気を遣わなくていいけど?」
そう言いながら、肩に掛けられたジャケットをぐいっと押し返そうとする。
奏多は慌てる様子もなく、小さく笑った。
「違うよ」
「すごく似合ってるし、可愛い」
「ただ、このジャケットなら、もっと君に似合うと思っただけ」
穏やかな口調でそう言われても、
「……ふん」
蓮はぷいっと顔を背ける。
「そういう口のうまいところが信用できないんだよ」
どうやら、奏多の言葉を信じる気はまったくないらしい。
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