必ず助けますから
しばらくして、大通りにヴォルグ兵の一団が現れた。
灰色の軍服。
手には長銃。
背中には、黒い鉄で作られたランタン型の装置を背負っている。
その内部で、淡い光が弱々しく揺れていた。
「……あれは」
レテが息を呑む。
姿は見えない。
けれど、そこに精霊がいることだけは分かった。
怯えた気配。
助けを求めるような、かすかな震え。
光の中心から伸びた細い管が、装置の奥へ繋がっている。
次の瞬間。
兵士が長銃を構えた。
ランタンの内部が強く発光し、淡い光が無理やり吸い上げられていく。
声は聞こえない。
姿も見えない。
それでも、精霊が苦しんでいることだけは痛いほど伝わった。
「……なんだよ、あれ」
ログの声が低くなる。
アルゴスが彼の足元で、不安そうに身体を寄せた。
「精霊から霊素を抜き取り、武器へ送っているのでしょうねぇ」
ユノの声から、普段の柔らかさが消えていた。
キュウの周囲に浮かぶ火の玉も、怒りを表すように激しく揺れている。
「ふざけやがって……」
ログが建物の陰から飛び出そうとする。
その肩を、アーヴェルが掴んだ。
「離してください、隊長」
「ならん」
「あれ、精霊が入ってるんですよ!」
「分かっている」
「だったら――」
「ここで動けば、我々の存在が知られる」
低く抑えた声。
だが、アーヴェルの拳も強く握られていた。
「証拠を押さえなければ、救えるのは目の前の一体だけだ」
ログが言葉を詰まらせる。
「ヴォルグが組織的に精霊を利用している証拠を持ち帰る」
アーヴェルは通り過ぎていく兵士たちを睨みつけた。
「そうすれば、この国に囚われている全ての精霊を救う理由になる」
「……分かりました」
ログは悔しそうに俯く。
「すみません、隊長」
「謝る必要はない」
兵士たちが四人の前を通り過ぎていく。
ランタンの中の光は、今にも消えてしまいそうなほど弱くなっていた。
その淡い光が、一瞬だけ揺れる。
まるで、こちらへ手を伸ばしたように。
「……っ」
レテは胸元を押さえた。
隣では、ディーネが落ち着かない様子で大きなヒレを揺らしている。
契約者にしか見えないその姿を、レテはそっと抱き寄せた。
「大丈夫です」
震える声で呟く。
「必ず助けますから」




