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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
工場国家ヴォルグ編

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幕間 男に二言はねぇ

時は少し遡る。


 アルトと別れたライは、一人で工場内の通路を歩いていた。


 けたたましい警報音が鳴り響き、何人もの兵士が目の前を駆け抜けていく。


「侵入者を探せ!」


「各区画を封鎖しろ!」


「フェルギアを正面区画へ集めろ!」


 怒号と金属音が飛び交う中、ライは壁際に寄り、腕を組んだ。


「んー……。」


 アルトの仲間が潜入しやすいようにしてやる。


 そう約束した。


 男に二言はない。


 だが、どうすれば潜入しやすくなるのか。


 ライは行き交う兵士たちを眺めながら、難しそうな顔で唸った。


「門は兵士だらけだしよぉ……。」


 窓から外を覗き込む。


 工場の周囲には、騒ぎを聞きつけた兵士たちが次々と集まってきていた。


 ヴォルグの城門にも警備兵が配置され、入国する者への検査が厳しくなっている。


 このままでは、アルトの仲間が中へ入るのも難しいだろう。


「入口が一つしかねぇから、面倒なんだよなぁ。」


 ライの視線が、窓の隣にある分厚い外壁へ向けられた。


 何重もの鋼板で補強された巨大な壁。


 普通の人間ならば、壊すことなど考えもしないだろう。


「だったらよぉ――」


 ライはニヤリと笑った。


「入口を増やしゃいいだけじゃねぇか!」


 右腕をゆっくりと持ち上げる。


 バチッ。


 指先で青白い光が弾けた。


 バチバチバチッ!


 細い雷が指先から腕へと走り、握り締めた拳へ集まっていく。


 周囲の照明が激しく明滅した。


 壁際に設置されていた機械から火花が散り、警報音へ耳障りな雑音が混じる。


「な、なんだ!?」


「周辺の魔導機器に異常が!」


「おい、あそこに誰かいるぞ!」


 兵士たちがライへ気づく。


「あぁ?」


 ライは鬱陶しそうに振り返った。


「今、兄弟との約束を守ろうとしてんだ。」


「邪魔すんな!」


「侵入者だ!」


「捕らえろ!」


「どけどけぇ!」


 ライは兵士たちへ背を向け、外壁へ向かって駆け出した。


 拳を包む雷が、さらに強く輝く。


「これで兄弟の仲間も入りやすくなるだろ!」


 大きく拳を振りかぶった。


「おらぁぁぁっ!」


 ドッカァァァンッ!


 雷をまとった拳が外壁へ突き刺さる。


 青白い光が鋼板の内部を一瞬で駆け巡り、分厚い壁を内側から弾け飛ばした。


 爆風が通路を駆け抜ける。


「うわぁぁっ!」


 駆け寄ってきた兵士たちが、まとめて床へ転がった。


 砕けた鋼板と瓦礫が外へ吹き飛び、壁には巨大な穴が開いている。


「外壁が破壊されたぞ!」


「別の侵入者だ!」


「増援を回せ!」


 施設内が、さらに慌ただしくなる。


 土煙の中。


 ライは腰へ手を当て、満足そうに大穴を眺めた。


「ガッハハハ!」


「完璧じゃねぇか!」


 穴の向こうには、ヴォルグの街並みと、その先に広がる荒野が見えている。


 これなら城門を通らずとも、外から中へ入ることができる。


「男に二言はねぇ!」


 ライは得意げに胸を張った。


 しかし、その直後。


「あ。」


 自分には本来、別の目的があったことを思い出す。


 この国のどこかに保管されている、探し物。


 それを回収するためにヴォルグへ来たのだ。


 あまり余計なことに時間を使っていれば、待たせている兄貴が機嫌を悪くするかもしれない。


「……兄貴に怒られっかな。」


 一瞬だけ、真剣に考え込む。


 だが、すぐに笑った。


「まぁ、いいか!」


 ライは隣にある、もう一枚の外壁へ目を向けた。


「一個だけじゃ、兄弟の仲間が気づかねぇかもしれねぇしな!」


 右腕に、再び雷が走る。


「もう一個、開けといてやるか!」


「ま、待て!」


「これ以上、壁を壊させるな!」


 兵士たちが立ち上がり、ライへ向かってくる。


「遅ぇ!」


 ライは拳を振りかぶった。


「おらぁぁぁぁっ!」


 ドォォォンッ!


 二度目の轟音が工場全体を大きく揺らした。

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