男に二言はねぇ!
「んで?」
ひとしきり笑い終えたライは、氷漬けになった部屋を見回した。
「アルト。オメェ、精霊を助けるって言ってたけどよ。」
「どうするつもりなんだ?」
「どうするって……。」
アルトも周囲へ視線を向ける。
この工場がどれほど広いのかは分からない。
精霊たちがどこに閉じ込められているのかも。
だが、フェルギアや施設内の機械が動いている以上、必ずそれらを支えるものがある。
「これだけでかい工場みたいな場所なんだ。」
「どこかに動力源があるだろ。」
「ほうほう。」
「まずはそれを探して壊す。」
アルトは《砕》を肩へ担ぐ。
「動力を止めれば、機械もフェルギアも動かなくなるかもしれない。」
「その後で、ここにいる奴らをぶっ飛ばす。」
「なるほどなぁ!」
ライは何度も大きく頷いた。
そして感心したようにアルトを見つめる。
「兄弟……。」
「見かけによらず、いい奴で頭もいいんだなぁ!」
「見かけによらずって……。」
アルトの眉間にしわが寄る。
「お前にだけは言われたくねぇ!」
「ガッハハハ!」
ライは腹を抱えて笑った。
「悪りぃ悪りぃ!」
「全然悪いと思ってないだろ。」
「思ってる思ってる!」
笑いながら答える時点で、まったく反省しているようには見えなかった。
アルトは呆れながらも、ライへ尋ねる。
「お前はどうするんだ?」
「あー。」
ライは頭を掻く。
「俺も手伝ってやりてぇんだけどよ。」
「あいにく、俺には俺でやることがあんだ。」
先ほどとは違い、その声には少しだけ真剣さが混じっていた。
「兄貴も待たせてるしな。」
「兄貴?」
アルトは首を傾げる。
「やることって何だよ?」
「それは言えねぇ。」
ライはきっぱりと答えた。
「言えねぇのかよ!」
「秘密ってのは、簡単に話したら秘密じゃなくなるからな!」
「急にまともなこと言うなよ……。」
「だろ?」
ライが得意げに胸を張る。
「別に褒めてない。」
「つーかよ、兄弟。」
「だから兄弟はやめろ。」
「アルトは一人なのか?」
今度こそ無視することにした。
「一人は捕まった。」
ガオンの姿が頭に浮かぶ。
眠らされたまま、ドクターの専用機に連れ去られた。
「それで、他の何人かはこれから潜入してくるはずなんだけど……。」
アルトは小さく顔をしかめた。
「俺が騒ぎを起こしたせいで、潜入するのが難しくなってるかもしれない。」
「んー。」
ライは腕を組む。
「んーんー。」
「ちゃんと考えてるのか?」
「考えてる考えてる!」
「本当かよ……。」
ライはしばらく唸ったあと、勢いよく顔を上げた。
「よし!」
「何だよ。」
「だったら俺が、その後から来る仲間が潜入できるように、なんとかしといてやる!」
「……は?」
アルトは目を瞬かせた。
「なんとかって、どうするつもりだよ。」
「それは俺に任せとけ!」
ライは自信満々に胸を叩く。
「いや、だから……。」
アルトは氷漬けになったフェルギアと兵士たちへ視線を向ける。
「できるのか?」
「あぁ?」
ライはアルトを睨む。
そして、口元を大きく吊り上げた。
「男に二言はねぇ!」
「……。」
見た目だけなら、不安しかない。
言動も荒い。
そもそも、名前以外は何者なのかさえ分からない。
それでも、この部屋の惨状を作り出した何者かと行動しているらしい。
少なくとも、普通の人間ではない。
「分かった。」
アルトは《砕》を握り直した。
「レテたちを頼む。」
「おう!」
ライは満面の笑みで親指を立てる。
「任せとけ、兄弟!」
「兄弟じゃねぇ!」
アルトの声が、氷漬けになった部屋へ響き渡った。




