↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
工場国家ヴォルグ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
90/448

今なんつった?


「いや……。」


 アルトは困惑しながらも、《砕》を下ろさない。


「お前が急に後ろから声をかけてきたんだろ。」


「あぁ!? 口答えしてんじゃねぇぞ!」


「会話が通じない奴だな……。」


「あぁぁん!?」


 男の額に青筋が浮かぶ。


 アルトは小さく息を吐き、凍りついた部屋へ視線を向けた。


「……これ、お前がやったのか?」


「あー?」


 男も氷漬けにされた兵士たちを見る。


 そして、挑発するように口元を吊り上げた。


「だったら、なんだって言うんだよ?」


 その顔は、今にも襲いかかってきそうなほど凶悪だった。


 アルトは男と氷漬けの兵士たちを交互に見る。


「いや。」


 《砕》をわずかに下ろした。


「別に、どうでもいいんだけどさ。」


「……あぁ?」


 男の笑みが固まる。


「オメェ、仲間がやられて敵討ちってわけじゃねぇのかよ?」


「仲間じゃねぇよ。」


 アルトは即座に答えた。


「俺はヴォルグの人間じゃない。」


「じゃあ、こんな所で何してやがる。」


「精霊を探してる。」


「あぁ?」


「俺は、ここに捕まってる精霊を助けたいんだ。」


「……。」


 男の動きが止まった。


 先ほどまでの威圧的な表情が消えている。


「オメェ……。」


 低い声が漏れた。


「今、なんつった……?」


 部屋の空気が変わる。


 男の鋭い目が、真っ直ぐアルトへ向けられていた。


 ふざけている様子はない。


 先ほどまでの軽薄な態度とは、まるで別人だった。


 アルトは《砕》を握り直す。


「精霊を助け――」


 最後まで言い切ることはできなかった。


 男の姿が視界から消える。


「なっ――」


 次の瞬間には、目の前にいた。


 反応する暇さえない。


「くっ!」


 アルトは《砕》を構えようとする。


 しかし、その前に両腕ごと男に抱え込まれた。


「しまっ――」


 アルトは身体を捻り、拘束から抜け出そうとする。


 だが、男の腕はびくともしない。


 凄まじい力だった。


「精霊を助けるって、オメェ……。」


 男の腕に力がこもる。


 ぎゅううううっ、と締め上げられ、アルトの身体が軋んだ。


「ぐっ……!」


(まずい……!)


 このままでは折られる。


 アルトが《砕》を握り直そうとした、その時。


「オメェ……!」


 男の声が震えた。


「……え?」


 アルトは動きを止める。


 男の目から、大粒の涙が流れ落ちていた。


「めっちゃいい奴じゃねぇがぁぁぁぁ!」


 男はアルトを強く抱き締めたまま、子どものように号泣し始める。


「精霊を助けるなんてよぉぉぉ!」


「今どき、そんなこと言う奴がいるのかよぉぉぉ!」


「お、俺は……俺は感動したぞ、この野郎ぉぉぉ!」


 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、さらに腕へ力を込める。


「ぐえっ!」


 アルトの身体から、変な声が漏れた。


「苦しい! 苦しいって!」


「オメェ、最高だよぉぉぉ!」


「分かったから離せ!」


「俺ぁ、オメェみたいな奴を待ってたんだよぉぉぉ!」


「えぇぇぇ……。」


 氷漬けになった兵士たちに囲まれながら。


 アルトは、号泣する金髪の男に抱き締められたまま、ただ困惑することしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。