助けたい奴ら
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
施設中に警報が鳴り響く。
赤い警告灯が一定の間隔で明滅し、薄暗い通路を不気味な赤色に染め上げる。
しかし、その音はアルトの耳にはほとんど届いていなかった。
頭の中に響き続けるのは、精霊たちの悲鳴だけ。
――助けて。
――苦しい。
――痛い。
――帰りたい。
声を聞くたびに胸が締め付けられる。
自然と拳に力が入った。
ギリッ、と骨が軋む音が鳴る。
「……許せない。」
小さく漏れたその声には、これまでにない怒りが滲んでいた。
「精霊を……。」
「まるで道具みたいに扱いやがって……!」
アルトの瞳に宿る怒りは、今にも溢れ出しそうだった。
その時――。
「侵入者だ!」
「第三警備班! 正面通路へ急げ!」
通路の奥から、十数人の衛兵が駆け寄ってくる。
剣や槍を構え、アルトたちを一斉に取り囲んだ。
「止まれ!」
「武器を捨てて投降しろ!」
アルトは鉄の棒《砕》を静かに握る。
「……悪い。」
「今は、お前たちに構ってる暇はない。」
衛兵隊長が鼻で笑う。
「侵入者が偉そうな口を叩くな!」
「全員で捕らえろ!」
「はぁぁっ!」
先頭の衛兵が槍を突き出す。
アルトは半歩身体をずらしてかわすと、そのまま《砕》を横薙ぎに振るった。
ガァンッ!!
「ぐあぁっ!」
槍ごと弾き飛ばされた衛兵が床を転がる。
間髪入れず、右から剣が振り下ろされる。
アルトは棒で受け流し、相手の腹へ蹴りを叩き込んだ。
「ぐふっ!」
衛兵は息を詰まらせ、そのまま壁へ激突する。
「囲め!」
「逃がすな!」
三人の衛兵が同時に飛び込んでくる。
アルトは《砕》を大きく回転させた。
ドゴッ!
ガンッ!
バキィッ!
三人まとめて吹き飛び、鎧を鳴らしながら床へ倒れ込む。
「……俺は、お前たちを倒しに来たんじゃない。」
アルトは倒れた衛兵たちを見下ろし、静かに言う。
「助けたい奴らが、この先にいるんだ。」
その言葉にも耳を貸さず、一人の衛兵が後退した。
「くっ……!」
腰の魔導通信機へ手を伸ばす。
「フェルギア隊! 侵入――」
ヒュンッ!!
アルトが投げた《砕》が一直線に飛ぶ。
バキィン!!
通信機だけを正確に弾き飛ばし、壁へ叩きつけて粉々に砕いた。
衛兵が目を見開く。
「なっ……。」
アルトは《砕》を拾い上げると、もう一度だけ口を開いた。
「頼む。」
「もう俺の邪魔をしないでくれ。」
その瞬間――
ガコン……。
ガコン……。
ガコン……。
通路の奥から、重く鈍い駆動音が響き始める。
衛兵たちの表情が変わった。
「来た……。」
「フェルギア部隊だ!」
暗闇の奥で、いくつもの赤い光がゆっくりと灯る。
まるで獲物を見つけた猛獣の瞳のように、その光はアルトたちを静かに見据えていた。




