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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ


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異端の来訪者

ジーアスの城門。


 巨大な門を前に、アルトは足を止めた。


 灰白色の石で築かれた城壁。


 その上を巡回する兵士たち。


 遠くからでも分かるほどの威圧感がある。


「……すげぇ。」


 思わず声が漏れる。


 その横で、レテは門へ向かって歩いていく。


「レテ・オーズィラです。」


 門兵へ名乗る。


 すると、門兵たちはすぐに姿勢を正した。


「レテ様。」


「お帰りなさいませ。」


 だが、その視線はすぐに隣へ移る。


 アルト。


 捕縛の腕輪。


 そこから伸びる長い鎖。


 そして。


 彼の周囲から離れていく精霊。


 門兵の表情がわずかに硬くなる。


「……報告にあった人物ですね。」


「はい。」


 レテは頷く。


「村を襲撃した魔物を討伐した者です。」


「精霊術は?」


「使えません。」


 門兵は一瞬黙る。


「ですが、魔物を単独で倒した。」


「はい。」


「そして、精霊が近づかない。」


 レテは答えなかった。


 否定できない事実だった。


 門兵はアルトを見る。


 警戒している。


 しかし、アルト本人はその視線に気付かず、城壁や街の様子に夢中だった。


「なぁレテ。」


「ん?」


「あの塔って何?」


「……。」


 門兵は眉をひそめる。


(本当に分かっていないのか?)


 自分がどんな目で見られているのか。


 どれほど異常な存在なのか。


 まるで理解していないように見えた。


「レテ様。」


 門兵が声を落とす。


「この人物は安全なのですか。」


 レテは少し間を置いた。


 村での出来事。


 精霊の反応。


 そして、アルトの笑顔。


 全てを思い返す。


「……少なくとも。」


「私が見た限りでは、人を傷つける意思はありません。」


 門兵は黙る。


 レテの判断を疑う者はいない。


 彼女はガイストでも高い信頼を得ている精霊術師だ。


「分かりました。」


 門兵は門へ向き直る。


「通行を許可します。」


 重い門がゆっくりと開いていく。


 巨大な扉の向こう。


 精霊国家ガイストの首都ジーアスが姿を現した。


「……。」


 アルトは息を呑む。


 城壁の内側には、無数の精霊がいた。


 街灯の周りを舞う火の精霊。


 噴水の上で揺れる水の精霊。


 風に乗って街を駆ける風の精霊。


 人々の暮らしの中に、当たり前のように精霊がいる。


「すげぇ……。」


 アルトは目を輝かせた。


 自分には近づいてくれない存在。


 それでも。


 こんなにも多くの精霊が、ここでは笑うように暮らしている。


「これが……ガイスト。」


 レテはその横顔を見る。


 精霊に拒絶される少年。


 なのに。


 精霊を誰よりも好きな少年。


 やはり、分からない。


 でも。


 少しだけ。


 この少年を知りたいと思った。

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