表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
79/216

鉄の人形⑥

 二人が同時に地面を蹴った。


「右膝の内側です!」


 ユノの声が飛ぶ。


 レテが先行し、《水凪》を低く構えた。


 鉄人形がそれを迎え撃つように拳を振り下ろす。


「レテ!」


「分かっています!」


 レテは足を止めない。


 振り下ろされた拳を紙一重でかわし、そのまま懐へ潜り込んだ。


「《水刃》!」


 至近距離から放たれた水の刃が、右膝の内側へ直撃する。


 鋭い音。


 装甲に亀裂が走った。


「ログ!」


「任せろ!」


 後ろから踏み込んだログが、《崩槌》を横薙ぎに振り抜く。


 亀裂の入った膝へ、重い一撃が叩き込まれた。


 金属が砕ける。


 鉄人形の右脚が大きく折れ曲がり、巨体が傾いた。


「倒れます!」


「まだだ!」


 アーヴェルが叫ぶ。


 鉄人形は片膝をつきながらも、腕を伸ばしてレテを掴もうとする。


「フェルメル!」


「首の後ろです! 今なら狙えます!」


「オーズィラ、下がれ!」


「はい!」


 レテが横へ飛ぶ。


 その直後、アーヴェルが正面から踏み込んだ。


 《不落》を下から振り上げ、鉄人形の身体を強引に仰け反らせる。


「スミスマン!」


「はい、隊長!」


 ログが地面を蹴った。


 傾いた背中を駆け上がり、《崩槌》を大きく振りかぶる。


「これで――三体目だ!」


 振り下ろされた《崩槌》が、首の後ろへ突き刺さった。


 鈍い破壊音。


 内部で何かが弾け、火花が一気に噴き出す。


 鉄人形の身体が激しく震えた。


 そして。


 胸元の赤い光が消える。


 巨体が前のめりに倒れ、地面を大きく揺らした。


「三体目……!」


 レテが息を整えながら呟く。


 だが、残る四体は動きを止めなかった。


 ゆっくりと四人を囲むように広がっていく。


 アーヴェルが《不落》を構え直す。


「来るぞ」


「まだやる気ですか……」


 ユノが《灯環》を握る。


 ログも荒い息を吐きながら、《崩槌》を持ち上げた。


「上等だ」


「スミスマン」


「分かってます。無理はしません」


「本当ですか?」


「うるせぇぞ、糸目」


 その時だった。


 残る四体の胸元が、同時に赤く明滅した。


 短い音が、連続して鳴る。


 四体は拳を構えたまま、ぴたりと動きを止めた。


「なんだ……?」


 ログが眉をひそめる。


 鉄人形たちの頭部が、同時にわずかに動く。


 まるで、どこか遠くの声を聞いているようだった。


「来ません」


 ユノの赤い瞳が細められる。


「熱の流れが変わりました」


「どう変わった」


「身体の外側へ集まっています」


 アーヴェルが一歩踏み出す。


 その瞬間。


 四体の鉄人形が、一斉に後ろへ跳んだ。


「逃げる気か!」


 ログが追おうとする。


「待て、スミスマン!」


 アーヴェルの声に、ログの足が止まる。


 鉄人形たちは四人へ背を向け、そのまま街道を駆け始めた。


 倒れた三体を回収する様子もない。


 金属の足音が次第に遠ざかっていく。


「追わなくていいんですか?」


 レテが尋ねる。


「罠の可能性がある」


 アーヴェルは遠ざかる背中を睨んだまま答えた。


「それに、こちらの消耗も大きい」


「俺はまだいけます」


「黙れ、スミスマン」


「はい」


 即答したログに、ユノが小さく笑う。


「随分と素直ですね、ログ先輩」


「隊長に逆らっても面倒なだけだ」


「聞こえているぞ」


「……すみません」


 レテが倒れた鉄人形へ視線を向ける。


「突然、撤退しましたね」


「ああ」


 アーヴェルは《不落》を下ろした。


「自分たちの判断で退いたのか。それとも、何者かの命令か」


「どちらにしても」


 ユノが《火眼》を解く。


 赤く染まっていた瞳が元の色へ戻った。


「私たちのことを、どこかで見ていた者がいるかもしれません」


 その言葉に、全員の表情が険しくなる。


 街道には、壊れた三体の鉄人形だけが残されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ