乗り物酔い
そして今度は、向かいに座るリオネルへ顔を向ける。
「そういえば、リオネルさんの魔器は――」
そこで言葉を止めた。
リオネルは荷台の隅で俯き、膝へ両手を置いたまま微動だにしていなかった。
「リオネルさん?」
「……問題、ありません。」
ゆっくり顔を上げたリオネルは、驚くほど青ざめていた。
「どう見ても問題あるだろ。」
ログが即座に言った。
「まさか、乗り物酔いですか?」
「そのようなことは……。」
馬車が小石を踏み、荷台が大きく揺れた。
「うっ……。」
リオネルが口元を押さえる。
ユノは笑顔のまま、そっと距離を取った。
「乗り物酔いですね。」
「断じて……違います。」
「無理をしないでください、リオネルさん。」
レテが隣へ移動し、その背中を優しくさする。
「レ、レテ殿……。」
一瞬だけリオネルの頬に赤みが戻る。
しかし、再び馬車が揺れた瞬間、その顔色は元に戻った。
「うっ……。」
「止めましょうか?」
アーヴェルが尋ねる。
「不要です……クロイツ殿。任務に……支障は……。」
「もう出てるだろ。」
ログが冷静に返す。
ユノは荷物の中から、小さな布袋を取り出した。
「酔い止めの薬草ならありますよ。」
「フェルメル殿……感謝する。」
「かなり苦いですが。」
「構いません。」
「舌も痺れます。」
「……ほかに方法は?」
結局、リオネルの魔器について聞ける状態ではなかった。




