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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ


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文句ねぇだろ

 商団の護衛たちは、唖然としながら二人の背中を見つめていた。


「十二!」


 ガオンが盗賊の一人を殴り飛ばす。


「今ので十人目だろ!」


「細けぇことはいい!」


「勝手に増やすな!」


 アルトが《砕》を振り抜き、最後の一人の足を払う。


 盗賊は背中から地面へ落ち、そのまま動かなくなった。


「これで終わりか?」


 アルトが周囲を見回す。


 倒れた盗賊たちが、街道のあちこちで呻いている。


 だが、大斧を担いだ頭だけは動いていなかった。


「使えねぇ奴らだ。」


 頭が吐き捨てる。


「十五人もいて、ガキ二人にやられやがって。」


「ガキじゃねぇ。」


 アルトが《砕》を構える。


「それに、お前一人だけ残ったぞ。」


「一人で十分だ。」


 男が大斧を肩から下ろした。


 刃には、赤黒い線が幾重にも刻まれている。


 ガオンが目を細める。


「魔器か。」


「元兵士だったもんでな。」


 頭が歯を見せて笑う。


「人を殺す道具の扱いには慣れてる。」


「じゃあ、先に俺がやる。」


 ガオンが前へ出た。


「おい、勝負はどうした!」


「こいつは頭だ。二人分で数える。」


「また勝手に決めてるだろ!」


 頭が大斧を振り上げる。


 刃に刻まれた術式が赤く光った。


「まとめて死ね!」


 大斧が地面へ叩きつけられる。


 轟音とともに、炎が一直線に街道を走った。


「っ!」


 アルトとガオンは左右へ飛ぶ。


 地面が裂け、土と火の粉が高く舞い上がった。


「火属性の魔器か。」


 ガオンは着地すると、楽しそうに口元を吊り上げる。


「面白ぇ。」


「近づくな!」


 アルトが叫ぶ。


 頭は大斧を横薙ぎに振るった。


 炎の刃が扇状に広がる。


 ガオンは腕を交差させ、正面から受け止めた。


「ぐっ……!」


 靴底が地面を削り、身体が後ろへ押される。


「ガオン!」


「手ぇ出すな!」


 炎の中から、ガオンが笑う。


「この程度で俺が止まるかよ!」


 身体から熱気が噴き出す。


 背後に炎を纏った獅子の影が浮かび上がった。


「なんだ、そりゃ……。」


 盗賊の頭が一瞬だけ目を見開く。


 その隙に、アルトが背後へ回り込んだ。


「よそ見すんな!」


 《砕》を振り下ろす。


 頭は咄嗟に大斧の柄で受け止めた。


 激しい衝撃音。


 男の両足が地面へ沈む。


「なんて馬鹿力だ……!」


「まだまだ!」


 アルトがさらに力を込める。


 大斧の柄が軋み始めた。


「調子に乗るな!」


 男が斧を捻り、アルトを弾き飛ばす。


 続けて刃を振り上げた。


「死ね!」


 アルトの頭上へ、大斧が迫る。


 横からガオンの拳が突き刺さった。


「遅ぇ!」


 盗賊の頭が吹き飛び、地面を転がる。


「俺の獲物を取るな!」


「殺されかけてた奴が言うな!」


「避けられた!」


「嘘つけ!」


 頭は口から血を吐きながら立ち上がった。


「てめぇら……。」


 大斧の術式が激しく明滅する。


 炎が男の両腕を包み、刃へ集まっていく。


「全員、馬車から離れろ!」


 アルトが叫んだ。


 護衛たちが商人を連れ、慌てて後退する。


「何をする気だ?」


「魔器を限界まで動かしてる。」


 アルトが《砕》を両手で握る。


「あれ、暴発するぞ。」


「なら、その前に潰す。」


 ガオンが腰を落とした。


「合わせろ、アルト。」


「命令すんな。」


「失敗すんなよ。」


「そっちこそ!」


 二人が同時に地面を蹴る。


「焼け死ねぇっ!」


 盗賊の頭が大斧を振り下ろした。


 巨大な炎が噴き出す。


 ガオンが正面から突っ込んだ。


「はあああっ!」


 炎を突き破り、男の懐へ潜り込む。


 拳が腹へめり込んだ。


「がっ……!」


 男の身体が僅かに浮く。


 その横から、アルトが《砕》を振り抜いた。


「終わりだ!」


 鉄の棒が大斧の柄を捉える。


 限界まで熱を帯びた魔器が、中央から折れた。


 術式の光が消える。


 次の瞬間。


 ガオンの拳が盗賊の頭の顔面へ突き刺さった。


 男は地面を何度も跳ね、そのまま動かなくなった。


 静寂が街道へ戻る。


 アルトが倒れた男へ近づき、息を確かめた。


「生きてる。」


「当たり前だ。手加減した。」


「絶対今考えただろ。」


「はっ!」


 ガオンは商団へ振り返る。


「これで文句ねぇだろ。」


 会頭と護衛たちは、言葉を失って二人を見つめていた。

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