↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
休暇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

642/672

極致

「ははは。余裕だなぁ」


 エルネが《翠角》を軽く振った。


「……じゃあ、これを捌けたら教えてあげるよ」


 その瞬間。


 エルネの纏う空気が変わった。


「…………」


 先ほどまで浮かべていた笑みが消える。


 《翠角》の切先が、静かにノエルへ向けられた。


「……へぇ」


 ノエルが口元を緩める。


「やってみてよ」


 剣を構えた。


 互いに動かない。


 風が石畳の上を通り抜ける。


 静寂。


 そして。


「《寸角》」


 シュッ!


「……っ!」


 ノエルの目が見開かれた。


 速い。


 いや、違う。


 踏み込みも、腕の動きも、あまりに小さい。


 気づいたときには、《翠角》の切先が頬に触れていた。


「……くっ!」


 キィンッ!


 ノエルが剣を跳ね上げる。


 間一髪。


 レイピアの切先を弾いた。


「よし……!」


 だが。


 エルネは止まっていなかった。


 突き出した腕を引かず、そのまま一歩。


 ノエルの懐へ踏み込む。


「《衝角》」


「……え?」


 ゴッ!


「ぐっわ!」


 ノエルの顔面に衝撃が走った。


 鹿の角を模した《翠角》の護剣。


 その硬い突起が、ノエルの顔を打ち据えたのだ。


 ノエルの身体が後ろへよろめく。


「……いってー……!」


 顔を押さえながら、どうにか踏みとどまった。


「……あれ?」


 エルネが首を傾げる。


「意識を飛ばすつもりだったんだけどな」


 ノエルは顔をしかめた。


 護剣が当たる直前。


 咄嗟に半歩、後ろへ下がっていた。


 衝撃を完全には避けられなかったものの、打撃の威力を殺すことには成功していた。


「……危なかった」


 ノエルが息を吐く。


「まともに食らってたら、終わってたかも」


「ははは!」


 エルネが笑った。


「まぁ、よくできました!」


 《翠角》を肩に担ぐ。


「はなまるとはいかないけど……」


 少し考えるように顎へ手を当てた。


「一人だけなら、教えてあげようかな」


「…………」


 ノエルは俯いた。


 拳を握り締める。


「……悔しい」


「うんうん」


 エルネが頷いた。


「自信があるからこそ、それが挫かれたときに意味がある」


 ノエルが顔を上げる。


「……君はもっと強くなれる」


 エルネは穏やかに笑った。


 そして、すぐにいつもの調子へ戻る。


「さて! 誰の極致を知りたい?」


「…………」


 ノエルが少し考える。


「……じゃあ、あんた達の頭領の」


「それはダメ」


 即答だった。


「えー!」


「ダメなものはダメ」


 エルネが首を振る。


「じゃあ……」


 辺りを見回した。


「あの紫の小太りの極致を教えるよ」


 その視線の先。


 リオネルと対峙する、派手な紫色の服を着た男。


 ドーマがいた。


「…………」


 ノエルが露骨に顔をしかめた。


「……一番興味ない」


「ひどいなぁ」


「……まぁいいや!」


 ノエルが剣を構え直す。


「教えて」


「うん」


 エルネも《翠角》を構えた。


「彼は《欺刃の極致》」


「……欺刃?」


「そう」


 エルネが小さく息を吐く。


「欺き、騙し、翻弄する」


 そして。


 少しだけ、嫌そうな顔をした。


「……一番、僕が嫌いな極致さ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。