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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
休暇

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馬鹿力

「こんの! 馬鹿力め!」


 ゲンザが歯を食いしばる。


 二本の《虎鉄》が、《ルイナ》の槌頭を押し返そうと軋んだ。


「そっちもなぁ!」


 ダリウスがさらに力を込める。


 互いの足元で石畳が割れた。


 だが。


 どちらからともなく、笑い声が漏れた。


「「ガッハッハッハ!」」


 力を込めたまま、二人は顔を見合わせる。


「ゲンザ! 酒は飲めるか!」


「当たり前よ!」


「ガッハッハッハ! 出会い方さえ違えば!」


「あぁ! 俺たちはぁ!」


「「親友だったろうなぁ!」」


 ガァンッ!


 互いの武器を弾き、二人が距離を取った。


 ゲンザは《虎鉄》を握り直す。


「なら、親友になるはずだった男に、とっておきを見せてやるぜ!」


 腰を落とした。


 両腕を大きく開く。


「《虎乱舞(とらんぷ)》!」


 ドンッ!


 低い姿勢から、ゲンザが飛びかかった。


 右。


 左。


 右。


 左右の短棍が、凄まじい勢いで振るわれる。


 ガンッ! ガギィンッ!


 ダリウスは《ルイナ》の柄で受け止めた。


 だが、ゲンザの攻撃は止まらない。


 脇腹。


 肩。


 膝。


 次々と狙いを変え、短棍が襲いかかる。


「おぉ! これは……!」


 ダリウスが戦槌を引き寄せる。


 だが、その巨大さゆえに、細かな連撃へ対応しきれない。


「捌ききれんか!」


 ガンッ!


 一本が脇腹を打った。


 続けて、もう一本が肩へ迫る。


「ぬぅぅぅぅ!」


 ダリウスは逃げなかった。


 むしろ、前へ踏み込んだ。


 ドンッ! ガンッ!


 短棍が肩と胸を打ち据える。


 だが、巨体は止まらない。


「……⁉︎」


 ゲンザの目が見開かれた。


「捌けないなら、身体で受け止めるとはなぁ!」


「ガッハッハッハ!」


 ダリウスが《ルイナ》を頭上へ持ち上げた。


「第一継承技!」


 巨大な槌頭が、勢いよく振り下ろされる。


「《破城(ブリゼランパール)》!」


「ぬぉぉぉぉぉ!」


 ゲンザは咄嗟に二本の《虎鉄》を交差させた。


 直後。


 ドゴォォォンッ!


 凄まじい衝撃が炸裂する。


 ゲンザの身体が吹き飛んだ。


 石畳を跳ね、何度も転がる。


 だが。


「ガッハッハッハ!」


 ゲンザは笑いながら起き上がった。


「いいねぇ! 最高だぜ!」


「まだまだいくぞぉ!」


 ダリウスが《ルイナ》を引き寄せる。


 今度は槌頭を低く構えた。


「第二継承技!」


 地面を抉るように、戦槌を振り上げる。


「《地裂(フェンドテール)》!」


 ドガガガガッ!


 石畳が裂けた。


 砕けた岩塊が、次々と跳ね上がる。


 地面を伝う衝撃とともに、大量の瓦礫がゲンザへ襲いかかった。


「ガッハッハッハ! 最高だぜぇ!」


 ゲンザは両肩を大きく回した。


 右腕。


 左腕。


 二本の《虎鉄》が、円を描くように動き始める。


「《虎乱砲輪(とらんぽりん)》!」


 ガンッ!


 迫る岩塊を、右の短棍が打ち返す。


 続けて左。


 ガァンッ!


 砕けた石が、ダリウスへ向かって飛んだ。


「おおっ!」


 ダリウスは《ルイナ》を振るい、飛来する瓦礫を叩き砕く。


 だが、その向こうでは。


 ゲンザが両腕を回し続けていた。


 右。


 左。


 右。


 次々と迫る岩塊を打ち返していく。


 ガンッ! ガギィンッ!


 砕けた石が飛び交い、石畳が削られる。


 やがて。


 ドゴォンッ!


 最後の岩塊が砕け散った。


 辺りを砂埃が覆う。


「…………」


「…………」


 静寂。


 砂埃の向こうで、二つの影が動いた。


「……よう」


 ゲンザが片方の《虎鉄》を肩に担いだ。


「……おう」


 ダリウスも《ルイナ》を肩に担ぐ。


 互いの姿を確認すると。


 その口元が、同時に吊り上がった。


「「もっとやろうぜ!」」


 ドンッ!


 二人は再び、地面を蹴った。

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