百戦の騎士②
ゴートーが《犀嶽》を構え直した。
グレイグもまた、大剣を握り直す。
「…………」
「…………」
先に動いたのはゴートーだった。
巨体が前へ出る。
横薙ぎ。
ブォンッ!
グレイグは盾を斜めに構えた。
ガギィンッ!
刃が盾の表面を滑る。
そのまま右腕を振るった。
大剣がゴートーの肩口へ迫る。
ガァンッ!
《犀嶽》が跳ね上がり、刃を受け止めた。
火花が散る。
ゴートーは剣を押し返すと、その勢いのまま振り下ろした。
グレイグは半歩退く。
ドガァンッ!
巨剣が石畳を叩き割った。
砕けた石片が飛び散る。
その隙を逃さず、グレイグが踏み込んだ。
大剣を低く構え、斜め上へ斬り上げる。
ゴートーは《犀嶽》を引き戻した。
ガギィィンッ!
刃と刃が噛み合う。
互いの腕に力が込められた。
ギリギリと金属が軋む。
ゴートーが一歩踏み込む。
グレイグは盾を押し出した。
ガンッ!
盾の縁が《犀嶽》の腹を叩く。
剣が僅かに逸れた。
グレイグは大剣を引き、再び斬り込む。
しかし。
ゴートーは身体を捻った。
刃が軍服の前を通り過ぎる。
そのまま巨剣を横へ振るった。
グレイグは盾を引き寄せる。
ガァァンッ!
衝撃に左腕が押し込まれた。
靴底が石畳を擦る。
だが、すぐに踏み止まる。
グレイグは盾を押し返し、大剣を突き出した。
ゴートーは半身になって躱す。
切っ先が脇腹を掠めた。
同時に、《犀嶽》の柄尻が突き出される。
ガンッ!
グレイグは盾で受けた。
間髪入れず、ゴートーが剣を振り上げる。
グレイグは大剣を横に構えた。
ガギィンッ!
刃がぶつかる。
押し合う。
互いの足元で、石畳が軋んだ。
「…………」
ゴートーが力を込める。
グレイグの剣が、僅かに押し下げられた。
だが。
グレイグは突然、抵抗を緩めた。
ゴートーの剣が前へ流れる。
その瞬間、盾を押し出す。
ガンッ!
盾の表面がゴートーの肩を打った。
巨体が半歩下がる。
しかし、ゴートーはすぐに足を踏み直した。
《犀嶽》を引き戻し、下段から斬り上げる。
グレイグは身体を反らした。
ブォンッ!
刃が眼前を通過する。
続けて、ゴートーが踏み込んだ。
グレイグも前へ出る。
ガギィンッ!
ガァンッ!
ギィィンッ!
剣と盾。
巨剣と大剣。
幾度となく金属がぶつかり、火花が散った。
一撃ごとに足場が削れ、二人の周囲には砕けた石片が積もっていく。
ゴートーが攻めれば、グレイグが受ける。
グレイグが斬り込めば、ゴートーが弾き返す。
どちらも、決定的な一撃を許さない。
やがて。
ガァァンッ!
互いの剣が激突した。
反動で、二人の身体が離れる。
ゴートーは《犀嶽》を肩へ担ぎ直した。
グレイグは大剣を下げ、盾を構える。
カタカタ。
その左手が、微かに震えていた。
ゴートーはその手を一瞥する。
(……まだ震えているのか)
だが、その視線はすぐにグレイグの大剣へ移った。
(……それでいて、この剣さばき)
「…………」
ゴートーは《犀嶽》を両手で握り直した。
グレイグもまた、静かに剣を構えた。
そして。
二人は再び、同時に踏み込んだ。




