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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ


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ヴォルグへ

城壁を越えた二人は、夜の街道を歩いていた。


 遠くには、ヴォルグへ続く道が暗闇の中へ伸びている。


 ガオンは迷いなく先を歩き、アルトは少し遅れてその背中を追っていた。


「なあ。」


「なんだ。」


「星詠みって、精霊術師とは何が違うんだ?」


「まだ気にしてたのか。」


「気になるだろ。俺が近くにいても、お前は力を使えたんだから。」


 ガオンは面倒そうに頭を掻いた。


「精霊術師は、精霊と契約して力を借りる。」


「それは知ってる。」


「星詠みは違う。星に選ばれて、その力を纏う。」


「契約はしないのか?」


「しねぇ。選ぶのは星の方だ。」


「じゃあ、お前が獅子を選んだわけじゃないんだな。」


「逆だ。獅子が俺を選んだ。」


 ガオンが胸を張る。


「俺に相応しいと見抜いたんだろうな。」


「偉そうだから、間違えて選んだんじゃねぇの?」


「燃やすぞ。」


「でも、精霊を使わないなら、俺の近くでも戦えるんだよな?」


「見ただろ。」


 ガオンが拳を握る。


 僅かな熱気が漏れ、夜の冷たい空気を揺らした。


「星の力は精霊を介さねぇ。だから、お前が近くにいようが関係ない。」


「じゃあ、俺と一緒に戦えるんだ。」


「俺についてこられるならな。」


「絶対追いついてやる。」


「はっ。言ってろ。」


 二人はそのまま街道を進んでいく。


 しばらくして、アルトが暗闇の先を見ながら口を開いた。


「ヴォルグって、昔は神聖国家セフィロアの属国だったんだよな。」


 ガオンが横目を向ける。


「知ってんのか。」


「ドレイクに聞いた。」


「ドレイクって誰だよ。」


「秘密だ。」


「聞かれたくねぇなら、名前を出すなよ。」


「お前が勝手に聞いたんだろ。」


「普通は聞くだろ。」


 ガオンは呆れたように鼻を鳴らした。


「まあいい。それで、どこまで知ってる。」


「セフィロアでは、神語が神の言葉として使われてた。ヴォルグでも同じ言葉を使ってたんだろ?」


「ああ。だが、ヴォルグ人はそのまま従ったわけじゃねぇ。」


「支配してる奴らに意味を知られないよう、少しずつ変えた。」


「知ってんじゃねぇか。」


「発音や言葉の意味を崩して、暗号みたいに使ってたって聞いた。」


 アルトが続ける。


「でも、独立したあとも残したんだよな。」


「支配された名残だから捨てる、なんて単純な話じゃねぇ。」


 ガオンは前を向いたまま答えた。


「自分たちが支配に抗った証しだ。ヴォルグ人にとっては、国の誇りでもある。」


「だから武器の名前にも使ってるのか。」


「そういうことだ。」


 アルトはヒルトの二丁拳銃を思い浮かべる。


「《ツインコード》も、ヴォルグの言葉なんだよな。」


「古い神語に近い響きらしいな。」


「でも、俺たちがヴォルグ人と話しても、普通に言葉は通じる。」


「ジーアスの術だ。」


「それはミレイアに習った。」


「今度はミレイアか。」


「言葉の壁が面倒だから、世界中に術をかけたんだろ?」


「とんでもねぇことを、随分軽い理由でやったもんだ。」


「ミレイアも同じこと言ってた。」


 ガオンが小さく笑う。


「昔の総帥ってのは、どいつも勝手な奴ばかりだな。」


「お前が言うなよ。」


「あ?」


「なんでもない。」


 二人の足音だけが、静かな街道へ響いていた。

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