白廻
「はぁ……はぁ……」
フィリアは。
《遠音》を握ったまま、荒い息を吐く。
「どうだ……はぁ……!」
「…………」
風が収まり。
舞い上がっていた土埃が晴れていく。
その向こうで。
セラは《白鶴》を手に立っていた。
「……今のは良かった」
「……へ?」
「……すごい!」
「⁉︎」
さっきまでの眠たそうな声とは違う。
セラの目が。
ほんの少しだけ開いていた。
「……あんな返し、初めて!」
「え……」
フィリアが思わず瞬きをする。
「急に元気……」
「目が少し覚めた!」
「そ、そう……」
セラが。
フィリアをじっと見つめる。
「……貴方、名前は?」
「フィ、フィリア……」
「フィリア」
セラが。
その名前を確かめるように繰り返す。
「覚えたからね!」
「う、うん……」
(ちょっとかわいいかも……)
そんなことを思った。
次の瞬間。
「フィリア!」
「は、はい!」
「次は私から行くね!」
「……え?」
セラが。
《白鶴》を構える。
「⁉︎」
空気が変わった。
ダンッ――!
セラが踏み込む。
一歩目。
右脚を軸に回転。
だが。
一周するより先に。
軸足が変わる。
左。
右。
また左。
足を入れ替えるたびに。
回転の中心そのものが移動していく。
(なに……これ⁉︎)
さっきまでとは違う。
その場で回るんじゃない。
回転しながら。
近づいてくる。
「――《白廻》」
ヒュンッ――!
「⁉︎」
来る。
だったら――。
「《風流》! 《逆――」
逆回転の風を。
もう一度。
「がっ⁉︎」
ドゴッ‼︎
出すより。
速かった。
《白鶴》の柄が。
フィリアの脇腹へめり込んでいた。
「か……はっ……!」
身体が浮く。
そのまま。
地面へ叩きつけられ。
何度も転がった。
「…………」
止まる。
《遠音》が消える。
「…………っ」
立たなきゃ。
そう思ったのに。
指一本。
動かなかった。
「…………」
セラの回転が。
ゆっくりと止まる。
「……ふぅ」
《白鶴》を下ろす。
「…………あ」
小さく欠伸をする。
「……また眠気が……」
そして。
倒れているフィリアを見る。
「…………」
しばらく見つめて。
「……はぁ」
溜息。
セラはフィリアのところまで歩いていく。
気を失っていることを確認すると。
その身体を引き寄せた。
「…………」
そのまま。
ずるずると。
フーガ達のいる方角へ引きずっていく。
「……意外と重い」




