極致
「驚いたやろ?」
フーガが。
《龍憑》を肩へ担ぎ直す。
「お前がおらんようになった後――」
口元に。
いつもの笑みが戻った。
「強かった俺らは、さらに強うなった」
「……なんで」
「ん?」
「なんで……そんなに……」
「……まぁ、色々や」
フーガが。
軽く肩を竦める。
「エルネさんは、これを《極致》って言うてたわ」
「極致……」
「せや」
フーガが。
自分の胸を親指で指す。
「俺の極致、当ててみ?」
「…………」
「カッコええで?」
「…………」
「なんや。ノリ悪いなぁ……」
つまらなそうに。
口を尖らせる。
「……ドーマもか?」
「あ?」
「ドーマも、その極致ってやつを使えるのか?」
「ドーマさん?」
フーガが。
きょとんとした顔をする。
「そやで?」
「…………」
レテ。
(あいつ……大丈夫――)
「人の心配してる場合ちゃうやろ」
「――⁉︎」
ズッ――!
《龍憑》の切っ先が。
真っ直ぐ。
俺の顔へ伸びる。
「くっ!」
上体を。
大きく後ろへ反らす。
刃が。
鼻先すれすれを通り過ぎた。
「ほいっ!」
そのまま。
《龍憑》が振り下ろされる。
(やっぱり!)
「そう……くるよなっ!」
「――あ?」
上体を反らしたまま。
身体を捻る。
左脚を跳ね上げた。
ガッ‼︎
「いった!」
蹴りが。
《龍憑》を握るフーガの手を打つ。
「ざけんなや!」
まだだ。
「……お?」
蹴り上げた左脚を。
そのまま振り切る。
ダンッ‼︎
地面へ。
踏み下ろす。
今度は。
その左脚を軸に。
もう一度。
身体を捻った。
「おらぁ!」
さっきまで。
軸にしていた右脚を。
フーガの腹へ叩き込む。
ドゴッ‼︎
「ぐっ……!」
フーガの身体が折れ。
片膝をついた。
「……いいやん!」
「まだまだ!」
その膝へ。
片足を乗せる。
踏み台にして。
一気に跳んだ。
身体を横へ倒し。
膝を突き出す。
「おらぁぁっ!」
「かっーかっ!」
ガンッ‼︎
「――ッ!」
《龍憑》の腹が。
俺の膝を受け止める。
ゴゥゥゥンッ‼︎
「ぐっ……!」
反動で。
後ろへ飛ぶ。
着地と同時に。
構え直した。
「くそ……決まらねぇ」
「…………」
フーガが。
ゆっくり立ち上がる。
「お前」
「あ?」
「力みすぎやろ」
「……?」
「戦ってんだから当たり前だろ?」
「そう?」
「…………」
フーガの肩から。
すっと。
力が抜けた。
「俺は――」
「――⁉︎」
消えた。
そう思った時には。
もう。
目の前にいる。
「そんなことないで?」
「はや――」
ドゴッ‼︎
「ごふっ⁉︎」
顎を。
真下から蹴り上げられた。
「がっ……!」
頭が。
大きく仰け反る。
視界が揺れた。
足元が。
ぐらつく。
そして。
仰け反った俺の胴は。
完全に空いていた。
「これはいったやろ!」
「――ッ」
霞む視界の中。
フーガが。
《龍憑》を横薙ぎに構える。
(ま……ず……い)
避けろ。
動け。
身体を――。
けど。
揺れる脳が。
もっと単純な答えを告げていた。
(――死ぬ)
「はい!」
《龍憑》が。
振り抜かれる。
「お疲れさん!」
その時だった。
「あれ?」
「――?」
突然。
知らない男の声がした。
「みんな、どこっすか?」
「…………」
《龍憑》が。
俺の胴を斬り裂く寸前で止まった。
フーガが。
声のした方へ顔を向ける。
俺も。
ふらつきながら。
そっちを見る。
「…………」
そこにいたのは。
見覚えのない男だった。
「……誰だ?」
俺が呟く。
フーガが。
僅かに眉を上げる。
「ミュゼ?」
「あ、フーガさん」
男――ミュゼが。
こっちへ歩いてくる。
そして。
俺の姿を見るなり。
「あ」
「……?」
ミュゼが。
少しだけ目を見開いた。
「アルト…君?」




