不死隊 第三席
返事はない。
ガオンは。
地面に倒れたまま。
ぴくりとも動かなかった。
「……ふん」
バルドが。
小さく鼻を鳴らす。
「惜しいな」
倒れたガオンを見下ろす。
「悪くはない」
少しだけ間を置いて。
「あいつも……アルトもそうだった」
バルドの目が。
僅かに細くなる。
「だが――」
《蜂穿》を持ち上げる。
「死ねば、お前らはそこで終わりだ」
それだけ言うと。
右肩に《蜂穿》。
左肩には。
気を失ったガオンを担ぎ上げた。
そして。
元来た道を。
ゆっくりと戻っていく。
「どうする?」
誰に聞かせるでもなく。
ぼそりと呟いた。
「――アルト」
◇ ◇ ◇
王城近く。
城壁や建物の補修に使う資材が積み上げられた一角。
切り出された石材。
丸太。
木箱。
荷車。
それらが並ぶ資材置き場に。
轟音が響き渡った。
ドゴォォォンッ‼︎
地面が揺れる。
大量の土埃が舞い上がり。
その中から。
二人の男が飛び出した。
「おらぁ!」
ログが。
巨大な《崩槌》を振り上げる。
全身を使い。
そのまま。
ゴートーへ振り下ろした。
「…………」
ゴートーは。
逃げない。
巨大な《犀嶽》を構え。
真正面から受け止める。
ゴィィィィィン‼︎
鈍い金属音が。
資材置き場全体へ響き渡った。
「ぐっ……!」
ログの両腕が。
衝撃で痺れる。
対して。
ゴートーは。
一歩も下がらない。
「なんつー力だよ?」
ログが。
歯を見せて笑う。
「えぇ? 不死隊第三席さんよぉ?」
「…………」
「…………」
返事はない。
「つーかよ」
ログが。
《崩槌》を肩へ担ぐ。
「アルトの家族が不死隊だなんてな。いまだに信じられねぇ」
「…………」
「だんまりかよ……」
ログの笑みが。
少しずつ消えていく。
「なぁ」
ゴートーを。
真っ直ぐに見た。
「家族なのに、アルトのことを殺すのか?」
「…………」
また。
返事はない。
「……アルトの奴」
ふと。
ログの脳裏に。
あの夜の光景が浮かぶ。
自分の家で。
ガオンと一緒に。
アルトの話を聞いた夜。
家族の話をするアルトは。
いつもより少しだけ。
楽しそうだった。
「アンタらのこと……楽しそうに話してたぜ?」
「…………」
「多少、やり過ぎな鍛錬もあったみてぇだけどよ」
ログが。
《崩槌》を握り直す。
「日課も続けてるぞ?」
「…………」
「毎日毎日、馬鹿みてぇに身体動かして」
それが。
アルトにとって。
当たり前になっている。
ここを離れた今でも。
ずっと。
「…………」
「答えろよ……」
ようやく。
ゴートーの口が開いた。
「……あぁ」
「…………」
「殺す」
その答えを聞いた瞬間。
ログの顔から。
完全に笑みが消えた。
「……そうかよ」
ドゴォンッ‼︎
《崩槌》を。
地面へ叩きつける。
「――《突岩》!」
ゴゴゴゴゴッ‼︎
ゴートーの足元から。
巨大な岩の棘が。
次々と突き上がった。
「…………」
ゴートーが。
《犀嶽》を振り上げる。
そして。
ただ一度。
振り下ろした。
ドゴォォォンッ‼︎
「なっ⁉︎」
衝撃。
突き上がった岩の棘が。
まとめて砕け散った。
岩片が。
雨のように周囲へ降り注ぐ。
「……やらせるかよ!」
ログが。
左手を前へ突き出した。
「アルトは――」
砕け散った岩片が。
空中で止まる。
「俺達の仲間なんだよ!」
左手を。
勢いよく振るう。
「――《弾岩》!」
ドドドドドドドッ‼︎
無数の岩礫が。
一斉にゴートーへ襲いかかった。
「…………」
だが。
ゴートーは。
動かない。
避けようともしない。
「――⁉︎」
岩礫が。
次々と身体へ直撃する。
土埃が巻き上がり。
その姿を覆い隠した。
「…………」
ログが。
《崩槌》を構えたまま。
土埃の向こうを睨む。
やがて。
「……終わりか?」
「――!」
低い声。
土埃の中から。
ゴートーが姿を現した。
「……嘘だろ?」
ほとんど。
効いていない。
ゴートーが。
《犀嶽》を握り直す。
「……いくぞ」
「――ッ!」
次の瞬間。
ドンッ‼︎
ゴートーの足元が。
爆ぜた。
「はやっ――」
巨体が。
一瞬で。
ログの目の前へ。
《犀嶽》が。
横薙ぎに振るわれる。
「くっ……!」
ログが。
咄嗟に《崩槌》を差し込んだ。
ガァァァァンッ‼︎
「うおっ⁉︎」
受けた。
はずだった。
だが。
止められない。
ログの身体が。
凄まじい勢いで宙を飛ぶ。
「ぐっ――!」
ドガァァァンッ‼︎
積み上げられていた。
木箱の山へ。
背中から突っ込んだ。
バキバキバキッ‼︎
木箱が。
次々と砕け散る。
その破片の中へ。
ログの身体が埋もれていった。




