脳筋
先に仕掛けたのは。
ヒルトだった。
右手の《ツインコード》を。
ゲンザへ向ける。
「――《拘束》」
一つ目の術式が。
銃身へ刻まれる。
「《分裂》」
さらに。
同じ銃へ。
二つ目の術式を重ねる。
二つの術式が。
一つへと変わる。
「――《蜘蛛檻》」
パンッ‼︎
一発の弾丸が。
ゲンザへ放たれた。
「お?」
直後。
弾丸が弾ける。
無数の細い糸が。
蜘蛛の巣のように広がり。
四方からゲンザへ襲いかかった。
「それなら――」
ゲンザが。
二本の《虎鉄》を振り上げる。
「こうすりゃいいだろ!」
ドカッ‼︎
《虎鉄》が。
石畳を叩く。
ドカッ‼︎
さらに。
もう一発。
ドカドカドカドカッ‼︎
「……⁉︎」
右。
左。
右。
左。
二本の《虎鉄》が。
凄まじい勢いで地面を叩き続ける。
石畳が割れ。
砕けた破片が。
次々と宙へ舞い上がった。
そこへ。
《蜘蛛檻》の糸が殺到する。
バババババッ‼︎
広がった糸が。
舞い上がった石片へ絡みつき。
次々と勢いを失っていく。
「…………」
ヒルトの頬が。
僅かに引きつった。
「ガッーハッハッハ!」
砕けた石畳の向こうで。
ゲンザが豪快に笑う。
「どうだ!」
「……脳筋」
「あぁ⁉︎」
「いや。なんでもない」
「よぉし!」
ゲンザが。
二本の《虎鉄》を握り直す。
「じゃ!」
腰を落とした。
「こっちから行くぞ!」
ニッと。
大きく笑う。
「もやしっこ!」
「……もやしじゃない!」
ダンッ‼︎
石畳が弾けた。
「オラオラァ!」
「――ッ!」
一気に。
距離を詰めてくる。
ヒルトは。
即座に引き金を引いた。
パンッ‼︎
「オラァ!」
ガンッ‼︎
右の《虎鉄》が。
弾丸を叩き落とす。
パンッ! パンッ‼︎
続けて二発。
ガンッ! ガンッ‼︎
「……っ!」
左。
右。
止まらない。
ゲンザは走りながら。
飛んでくる弾丸を次々と叩き落としていく。
「なら……!」
ヒルトが。
後方へ跳ぶ。
着地と同時に。
左手の《ツインコード》を構えた。
「――《分裂》」
一つ目。
「《軌跡》」
同じ銃へ。
二つ目の術式を重ねる。
銃身を走る二つの術式が。
一つへ。
「――《乱星》!」
パンッ‼︎
弾丸が放たれる。
そして。
空中で弾けた。
一発が。
二発。
四発。
八発――。
分かれた弾丸が。
それぞれ異なる軌道を描き始める。
正面。
左右。
頭上。
背後。
逃げ道を埋め尽くすように。
無数の弾丸が。
一斉にゲンザへ殺到した。
「おぉ……!」
ゲンザの目が。
嬉しそうに見開かれる。
「ガッハハハ!」
二本の《虎鉄》を。
強く握り締めた。
「いい手数じゃねぇか!」
次の瞬間。
ガガガガガガガガガガッ‼︎
「――⁉︎」
右。
左。
右。
返す。
捻る。
打つ。
弾く。
叩き落とす。
二本の《虎鉄》が。
止まらない。
一発を弾いた勢いのまま。
次の一発へ。
振り抜いた腕を。
わざわざ元へ戻すことすらしない。
そのまま。
次。
さらに次。
正面から。
左右から。
頭上から。
そして。
背後から。
次々と軌道を変えて襲いかかる弾丸を。
ゲンザは。
一発ずつ。
確実に叩き落としていく。
「なっ……!」
ガンッ‼︎
背後から迫った一発。
振り返ることすらせず。
《虎鉄》を脇の下から振り抜き。
叩き落とす。
さらに。
頭上。
右。
左。
正面。
ガガガガンッ‼︎
そして。
最後の一発。
ガンッ‼︎
弾丸が。
石畳へ叩きつけられた。
「…………」
一発も。
届いていない。
「……全部……?」
「ガッハハハハハ!」
ゲンザが。
二本の《虎鉄》を打ち合わせる。
ガァン‼︎
「いいねぇ!」
満面の笑み。
「けどな!」
その身体が。
グッと沈む。
「手数で――」
ダンッ‼︎
地面を蹴った。
「俺に勝とうなんざ百年早ぇぞ!」
「――ッ!」
パンッ‼︎
ヒルトが撃つ。
ガンッ‼︎
弾かれる。
もう一発。
ガンッ‼︎
さらに一発。
ガンッ‼︎
「オラァ!」
「くっ!」
気づけば。
ゲンザはもう。
目の前。
右の《虎鉄》が。
ヒルトの頭へ振り下ろされる。
「ッ!」
咄嗟に。
身体を横へ投げた。
ドゴォンッ‼︎
《虎鉄》が。
背後の屋台を叩き砕く。
木片が。
激しく飛び散った。
「まだまだぁ!」
「――⁉︎」
終わらない。
振り下ろした《虎鉄》を。
引き戻すより先に。
ゲンザの身体が回る。
左の《虎鉄》。
ヒルトが屈む。
その頭上を。
短棍が唸りを上げて通過する。
直後。
「オラァ!」
「ぐっ!」
右脚。
ヒルトが。
《ツインコード》を交差させて受ける。
衝撃に。
身体が後方へ弾かれた。
だが。
ゲンザは止まらない。
右。
左。
脚。
右。
左。
次。
次。
さらに次。
「オラオラオラオラァ‼︎」
「くっ……!」
撃つ暇がない。
いや。
違う。
撃とうと考えた瞬間には。
もう次の攻撃が来ている。
避ける。
防ぐ。
距離を取る。
そのどれかを選んでいる間にも。
次の一撃が。
目の前まで迫ってくる。
「こいつ……!」
ヒルトが。
歯を食いしばる。
(いつ――)
右の《虎鉄》を。
紙一重で躱す。
直後。
左。
(攻撃が――)
それを。
《ツインコード》で受け流す。
だが。
もう。
次が来ていた。
(終わるんだ……⁉︎)




