回る一閃②
フィリアは風を纏い。
さらに上空へ逃れる。
「でも!」
肩を押さえながら。
セラを見下ろす。
「空中に入れば――」
「……無駄」
「え?」
セラが。
《白鶴》を身体の前で構えた。
「――《天落とし》」
ブンッ――!
薙刀が。
手元で回転を始める。
一回。
二回。
三回。
次第に。
白い刃の輪郭すら見えなくなるほど。
回転が加速していく。
ブォォォォォッ‼︎
「な、なに……⁉︎」
高速で回転する《白鶴》に。
周囲の空気が巻き込まれる。
捻れ。
渦を巻き。
空気の流れそのものが。
大きく乱れていく。
「――きゃっ⁉︎」
フィリアの足元。
身体を支えていた風が。
ぐにゃりと歪んだ。
「うそっ――」
均衡が。
崩れる。
身体が傾き。
そのまま。
真っ逆さまに落ちていく。
「チィィィィッ‼︎」
絶叫に。
盛大な舌打ちが混じる。
「……隙あり」
セラが。
《白鶴》を横へ寝かせる。
長い柄を。
腰へ回すように構え。
そのまま――。
身体ごと回転した。
「――《墜円》」
ギュンッ‼︎
遠心力を乗せた白い刃が。
落下するフィリアの顔面へ迫る。
「――‼︎」
避けられない。
フィリアは咄嗟に。
《遠音》を顔の前へ構えた。
ガァンッ‼︎
「ぐぅぅぅぅっ‼︎」
受け止めた。
だが。
殺しきれない。
「がっ――!」
フィリアの身体が。
勢いよく吹き飛んだ。
バキッ!
バキバキッ‼︎
枝を。
一つ。
二つ。
いくつもへし折りながら。
ドンッ‼︎
「がはっ……!」
背中から。
木の幹へ叩きつけられた。
「…………」
ずるりと。
フィリアの身体が落ちる。
「ふぁ……」
セラが。
小さく欠伸をした。
「……まだやる?」
「…………」
フィリアの指が。
地面を掴む。
「……っ」
痛む身体を。
無理矢理起こす。
口元を拭い。
セラを睨みつけた。
「……なめんなよ」
「…………」
「ヒバリ!」
『――!』
「《追い風》!」
ブワッ‼︎
フィリアの背中へ。
強い風が吹きつける。
ダンッ!
その風に。
背中を押されるように。
一気に駆け出した。
「……おっそ」
「うっさい!」
フィリアが。
走りながら。
《遠音》の弦へ指をかける。
「――《地風》!」
ポロポロン。
ポロポロン――。
弦を。
連続して弾く。
その音に合わせ。
圧縮された風の塊が。
フィリアの進行方向。
地面へ。
一つ。
また一つ。
次々と生まれていく。
「……何を」
セラが。
眠そうな目でそれを見る。
「…………」
だが。
すぐに気づいた。
「……へぇ」
フィリアが。
一つ目の風を踏みつける。
バンッ‼︎
「――っ!」
風が破裂した。
その力が。
フィリアの足を。
前へ弾き飛ばす。
一気に。
加速。
さらに。
二つ目。
バンッ‼︎
「つぅぅっ……!」
足に。
鋭い痛みが走る。
(私の筋力じゃ……)
もう一つ。
踏む。
バンッ‼︎
(《韋駄天翔け》は……まだできない……!)
速すぎる加速に。
身体が悲鳴を上げる。
それでも。
止まらない。
(でも!)
フィリアの目が。
真っ直ぐ。
セラを捉える。
「威力を調整すれば――!」
最後の風を。
思い切り踏み抜く。
バァンッ‼︎
「速く走れる!」
「…………」
セラの口元が。
ほんの僅かに。
緩んだ。
「……ふふふ」
「――っ!」
フィリアが。
地面を蹴る。
背中を押す《追い風》。
《地風》によって得た加速。
その全てを。
最後の一撃へ乗せる。
「――《突風脚》‼︎」
風を纏った飛び蹴りが。
一直線に。
セラへと襲いかかった。




