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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
休暇

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回る一閃

「――やってやんよ!」


 フィリアが。


 《遠音》を構える。


「いくよ! ヒバリ!」


 呼びかけに応えるように。


 淡い光が。


 フィリアの傍らへ集まった。


 現れたのは。


 蝶の姿をした風の精霊――ヒバリ。


 ひらひらと。


 フィリアの周囲を一度飛び。


 その肩へ。


 そっと止まる。


「…………」


 セラは。


 何も言わない。


 ただ。


 《白鶴》を握る手に。


 僅かに力を込めた。


 次の瞬間。


 ダンッ!


「!」


 一気に踏み込む。


 白い刃が。


 フィリアへ向けて振るわれた。


「そこからじゃ当たらな――」


 ヒュンッ‼︎


「――って、危なっ⁉︎」


 フィリアが。


 咄嗟にしゃがむ。


 頭上。


 《白鶴》の刃が。


 髪を掠めるように通過した。


「なっ……!」


 遠い。


 セラとの距離は。


 薙刀の間合いよりも。


 ずっと離れていたはず。


 だが。


 セラは。


 《白鶴》の石突近くを。


 片手だけで握っている。


 柄の長さを。


 最大限に使った一撃。


「そんな使い方あり⁉︎」


「……あるから使ってる」


「だったら――!」


 フィリアが。


 風を纏う。


「近づかせない!」


 地面を蹴る。


「《天翔け》!」


 ブワッ‼︎


 風が。


 フィリアの身体を高く押し上げる。


 一気に。


 セラとの距離を広げる。


 そのまま。


 空中で《遠音》を構えた。


「――《音風弾》!」


 ポロ。


 ポロン――。


 弦が。


 軽やかな音を奏でる。


 その音に合わせ。


 圧縮された風の塊が。


 いくつも生まれた。


 そして。


 一斉に。


 セラへ飛んでいく。


「…………」


 セラは。


 動かない。


 迫る風の塊へ。


 《白鶴》を振るう。


 ガンッ!


「……!」


 刃が。


 風の塊へ触れた瞬間。


 バンッ‼︎


 風が。


 弾けた。


 同時に。


 甲高い音が。


 衝撃となってセラを襲う。


 さらに。


 二つ。


 三つ。


 バンッ!


 バンッ‼︎


「…………っ」


 風と音。


 二つの衝撃が。


 セラの身体を叩く。


「どんなもんじゃい!」


 空中から。


 フィリアが得意げに笑う。


「…………」


 セラが。


 《白鶴》を下ろす。


「……痛い」


「…………」


「……それだけ?」


「…………」


 セラの目が。


 僅かに細くなった。


 ダッ!


「!」


 駆け出す。


 だが。


 フィリアへ向かってではない。


 木々へ。


「何を――」


 セラが。


 木の幹を蹴る。


 ダンッ‼︎


 身体が。


 一気に跳ね上がった。


「嘘⁉︎」


 さらに。


 別の木へ。


 もう一度。


 蹴る。


 フィリアのいる高さまで。


 強引に駆け上がってくる。


「ちょっ――!」


 セラが。


 最後の木を。


 力強く蹴った。


 その反動で。


 身体を横へ回転させる。


 白い薙刀が。


 遠心力を乗せ。


 フィリアへ迫る。


「――っ⁉︎」


 避けられない。


「《追い風》!」


 ブワッ‼︎


「……!」


 横殴りの風が。


 セラの身体を捉えた。


 空中。


 足場のないセラが。


 大きく体勢を崩す。


「やりぃ!」


 フィリアが笑う。


 だが。


「……っ!」


 体勢を崩したまま。


 セラの腕が動いた。


 回転を止めることも。


 姿勢を戻すこともせず。


 《白鶴》を。


 ただ。


 突き出す。


「――ぎっ⁉︎」


 ザシュッ!


 フィリアの左肩を。


 白い切っ先が掠めた。


 血が。


 宙へ散る。


「っ……!」


 フィリアが。


 咄嗟に肩を押さえる。


「…………」


 落下していくセラと。


 空中に残るフィリア。


 一瞬。


 二人の視線が交わった。


「……この……!」


 フィリアが。


 傷口を押さえながら。


 セラを睨みつけた。

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