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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
休暇

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不死隊第四席

「……普通は」


 ユノが。


 傷口を押さえながら口を開く。


「体勢を崩したり……隙が生まれるんですが……」


「うん」


 エルネは。


 あっさりと頷いた。


「普通はね」


「…………」


「でもさ」


 《翠角》を軽く振り。


 切っ先を下げる。


「その枠に収まらず、磨き上げることだってできるよ?」


「……磨き上げる?」


「そう」


 エルネが微笑む。


「私はそれを――《極致》と呼んでる」


「……極致」


 ユノが。


 小さく呟いた。


「ところでさ」


「?」


「ユノ君は、なんで霊器を出さないの?」


「…………」


 ユノの表情が。


 僅かに曇った。


「……出せないんです」


「なぜ?」


「……え?」


「なぜ霊器を出せないんだい?」


「なぜ……とは?」


「そのままの意味だよ」


 エルネは。


 真っ直ぐユノを見つめる。


「君は、どうして霊器を出せない?」


「それは……」


 ユノが。


 視線を落とす。


 答えなら。


 ずっと。


 自分の中にあった。


「僕が――」


 弱いから。


 そう。


 口にしようとした瞬間。


「弱さは理由にならないよ?」


「⁉︎」


 ユノが。


 顔を上げる。


「じゃあ一体……!」


「それは――」


 エルネが。


 口を開く。


 だが。


「…………」


 そのまま。


 僅かに考えるように黙り込んだ。


 そして。


 《翠角》を構える。


「……自分で答えを出せよ」


「くそっ!」


 シュッ――!


 《翠角》が。


 再びユノへ襲いかかった。


     ◇ ◇ ◇


 同じ頃。


 路地を抜けた先にある。


 自然公園。


「…………」


「…………」


 二人の少女が。


 少し距離を空けて歩いていた。


「……ねぇ」


「…………」


「ねぇってば!」


「……うるさい」


 セラが。


 足を止める。


 眠そうな目を。


 不機嫌そうにフィリアへ向けた。


「何」


「あんた達、何者?」


「…………」


「なんでアルトにあんなことするの!」


「……貴方には関係ない」


「関係ある!」


 フィリアが。


 声を上げる。


「アルトは友達なんだよ!」


「…………」


 セラは。


 しばらくフィリアを見つめる。


 だが。


 返ってきたのは。


 アルトについての答えではなかった。


「……貴方の前に立ってた男の子は?」


「え……?」


「……あの灰色の髪の」


 少し間を置いて。


「そばかすの子」


「ヒール?」


「……恋人?」


「――っ⁉︎」


 フィリアの顔が。


 一気に赤くなる。


「違う違う!」


 ぶんぶんと。


 両手を振る。


「……今は……違う」


「…………」


 セラの目が。


 僅かに細くなった。


「……あっそ」


 そして。


「じゃあ――」


 ヒュッ――!


「⁉︎」


 白い刃が。


 フィリアの足元へ走った。


「《天翔け》!」


 風が。


 フィリアの身体を押し上げる。


 薙刀――《白鶴》が。


 その足元を薙ぎ払った。


 フィリアが。


 少し離れた場所へ着地する。


「何すんのよ!」


「……ああやって」


 セラが。


 《白鶴》を持ったまま。


 ぼそりと呟いた。


「いつも男の影に隠れてるんだ?」


「……は?」


「弱そうだもんね」


 眠そうな瞳が。


 フィリアを見つめる。


「貴方」


「…………」


 フィリアの表情が。


 消えた。


「……あの男の子もバカみたい」


「…………」


「弱いくせに、あんなカッコつけて――」


「取り消せ」


「……?」


 風が。


 吹いた。


 フィリアの足元から。


 ふわりと。


 風が巻き上がる。


「私は――」


 その手に。


 弓が現れる。


 《遠音》。


「弱くない」


 フィリアが。


 弦を引き絞った。


「――《震え風》」


 ポロン――。


 澄んだ音が。


 自然公園に響く。


 直後。


 空気が――。


 震えた。


 ドンッ‼︎


「…………」


 広範囲へ放たれた衝撃が。


 一気にセラへ押し寄せる。


 だが。


 セラは。


 《白鶴》を振るった。


 ヒュン――。


 たった。


 一振り。


 押し寄せた衝撃を。


 刃の流れに沿わせるように。


 横へといなす。


「…………」


 フィリアが。


 さらに《遠音》を構える。


「それに!」


 怒りを露わにして。


 セラを睨みつける。


「ヒールのこと何も知らないのに、勝手なこと言うな!」


「……ふぅん」


 セラは。


 相変わらず。


 眠そうな顔をしていた。


「じゃあ――」


 《白鶴》を。


 静かに構える。


「取り消させてみて?」


「…………!」


「不死隊――第四席」


 そして。


「《白閃》――セラ」


「…………」


「ふぁ……」


 小さく。


 欠伸を一つ。


 眠そうな目で。


 《白鶴》の切っ先をフィリアへ向ける。


「……私の欠伸くらいは、止めてよね?」


「…………」


 フィリアの眉が。


 ぴくりと動く。


 《遠音》を。


 強く握り締めた。


「――やってやんよ!」

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