感動の再会
「先にアルトさんへ攻撃したのは、そちらでしょう」
ユノがフーガを見据える。
「ちゃうちゃう」
フーガは指を振った。
「そういう話してへんねん」
「……?」
「お前の術や」
さっきまでの笑みが消える。
「当てる気もなければ、当たったところで殺す火力もない」
フーガが一歩。
ユノへ近づいた。
「そんなしょーもない術、撃ってきて何がしたいん?」
「…………」
「やるなら――」
口元だけが吊り上がる。
「最初から命取る気でこいや。お?」
「……みんな」
腹を押さえながら。
俺はなんとか声を絞り出した。
「逃げろ……」
「そんなわけにはいきません!」
レテが手を伸ばす。
「――《水凪》!」
水が渦巻き。
その手に湾曲した刃を形作る。
「《崩鎚》!」
「《灼獅》!」
ログとガオンが。
左右から同時に飛び出した。
「はぁ……」
フーガがため息を吐く。
「しょーもな――」
ガギィン‼︎
「――⁉︎」
激しい金属音が響いた。
ログの《崩鎚》が。
止まっている。
「なっ……⁉︎」
いつの間に。
ログとフーガの間に――。
巨漢が立っていた。
巨大なツヴァイヘンダー。
その刀身が、《崩鎚》を真正面から受け止めている。
(なんだ……⁉︎)
(いつの間に……!)
反対側。
ガオンも。
「こいつ……!」
止められていた。
長身の男。
その手に握られた長槍が、《灼獅》を受け止めている。
「…………」
ログの腕に力が入る。
ガオンも踏み込む。
なのに。
二人とも。
同時に顔を歪めた。
((ぴくりとも動かねぇ……!))
「チッ……先に行かモゴモゴ……」
長身の男が何かを呟く。
「なーに言ってるか分からんわ」
「チッ……」
「…………隊長」
巨漢が。
低い声でフーガを呼んだ。
「――⁉︎」
知ってる。
二人とも。
(バルド……)
(ゴートー……!)
でも。
今。
ゴートーは。
(……フーガに、隊長って言った……?)
「なんですか?」
フーガが振り返る。
「……この人達はどうする?」
「ああ」
フーガは。
何でもないことみたいに答えた。
「殺してもええよ」
「⁉︎」
「ダメだ!」
痛む腹を押さえて。
無理やり身体を起こす。
「殺すな……!」
俺は。
そこでようやく気づいた。
「……なっ⁉︎」
顔を上げる。
いつの間に。
俺達は――。
囲まれていた。
「…………」
眠そうな目でこちらを見る女。
「セラ……」
少し離れた場所には。
見覚えのある深緑の姿。
「エルネ……」
そして。
「ドーマ……」
「あ?」
酒臭そうな男が眉を寄せる。
「誰だオメェ?」
「……!」
レテが目を見開いた。
「貴方……この間、ジーアスで……」
「あぁ?」
ドーマがレテを睨む。
「だから誰だっつってんだよ」
「貴方は……」
今度はユノの声。
その視線の先で。
エルネが僅かに目を細めた。
「やぁ、ユノ君」
「…………」
「アルト君の友達だったんだね」
そして。
もう一人。
「ゲンさん……」
「ん?」
フーガも気づいたらしい。
「なんでゲンさんおるん?」
「ガッハハハハ!」
聞き慣れた豪快な笑い声。
「仕込みは完璧! あとはミュゼに任してきましたわ!」
「……まぁ」
フーガが頭を掻く。
「あいつは陽動に一番ええやろな」
「ガッハハ! そういうこった!」
そして。
ゲンさんが俺を見る。
「よぉ! アルト!」
「……ゲンさん……」
「元気か!」
「…………」
「友達いっぱいできて、よかったな!」
いつもの。
豪快な笑顔だった。
昔と。
何も変わらない。
「…………」
「……でも」
その笑顔が。
消えた。
「お前、あれだな」
目だけが。
真っ直ぐ俺を見る。
「挨拶もなしに出て行くなんて――」
声から。
笑いが消える。
「どういう了見だ?」
「…………」
背中が。
ぞくりとした。
「ゲンさん」
フーガが苦笑する。
「落ち着いて。キレたら手に負えんから」
「…………」
数秒。
ゲンさんは俺を睨んでいた。
けど。
「……そうだな!」
次の瞬間。
いつもの顔に戻る。
「ガッハハハハ!」
「…………」
俺は。
笑えなかった。
違う。
それよりも。
ずっと気になっていることがある。
「……グウェンは?」
「…………」
「隊長は……グウェンだろ?」
なのに。
さっき。
ゴートーは。
「なんで……フーガが……」
「あー」
フーガが。
何かを思い出したように手を叩いた。
「ゴートーさん」
「…………」
ゴートーがログを見る。
次の瞬間。
ツヴァイヘンダーを振るった。
「ぐっ!」
ログが弾かれる。
そのまま。
ゴートーは腰へ手を伸ばした。
「…………?」
取り出したのは。
布に包まれた何か。
それを持ったまま。
ゆっくりと俺の前まで歩いてくる。
「…………」
ドサッ。
包みが。
俺の目の前に置かれた。
「……なんだよ、それ」
「…………」
ゴートーは答えない。
代わりに。
フーガが笑った。
「ほら、アルト」
いつもの。
軽い声で。
「――感動の再会や」




