女子会
◇ ◇ ◇
七人でのおしゃべりの後。
女子部屋では――。
「…………」
「…………」
フィリアとレテが向かい合って座っていた。
お祭りの喧騒はまだ続いているのか、窓の外から楽しそうな声が聞こえてくる。
「それで?」
「……何がですか?」
「アルトと散歩してた時」
「…………」
「何があったの?」
「…………」
レテが黙る。
フィリアは急かさない。
ただ。
にこにこと笑いながら待っている。
「…………」
「…………」
「…………」
「……あの」
「うん」
「アルトくんに……」
レテが膝の上で指を絡める。
少し俯いて。
恥ずかしそうに、小さな声で続けた。
「……綺麗と、言われました」
「…………」
ぱち。
ぱち。
フィリアが目を瞬かせる。
そして――。
「えーーーーー⁉︎」
「フィリア!」
「いいなぁーーー!」
「声が大きいです!」
「あっ、ごめんごめん」
フィリアが口元を押さえる。
「へへ」
それでも。
笑いは隠せていない。
「いいなぁ。私もそんなこと言われてみたい!」
「もう……」
レテの頬がほんのり赤くなる。
「それで?」
「……まだあるんですか?」
「あるよ」
フィリアが身を乗り出した。
「頭を撫でたのは?」
「…………」
レテの手が止まる。
「……あれは」
「うん」
「……上手く言えないんですけど」
少しだけ考えて。
「そうしたくなって……」
「ふーん」
「なんですか、その顔は」
「別に?」
「絶対何か考えてますよね?」
「じゃあさ」
フィリアがさらに顔を近づける。
「抱きしめたのも?」
「っ⁉︎」
レテの顔が一気に赤くなった。
「あれは!」
「うん」
「……身体が勝手に……!」
「身体が勝手に?」
「そ、それに!」
レテがフィリアを指差す。
「フィリアだって! 抱きしめたじゃないですか!」
「あれはそういう空気だったから!」
「私だってそういう空気でした!」
「最初に抱きしめたのレテじゃん!」
「うっ……」
レテが言葉に詰まる。
「…………」
「…………」
そして。
フィリアがふと思い出したように口を開いた。
「……リオネルさんとかは、どう思うの?」
「リオネルさん?」
レテがきょとんとする。
「親切な方だと思いますが……」
「…………」
「あぁ……そう」
「?」
フィリアはそっと目を逸らした。
(かわいそうなリオネルさん……)
「というか!」
レテが話を戻す。
「そもそも、アルトくんのことだって仲間以上の感情はありません!」
「ふーん?」
「なんですか!」
「別にー?」
「その顔やめてください!」
「へへ」
フィリアが楽しそうに笑う。
レテは頬を膨らませ――。
「……そういうフィリアはどうなんですか?」
「え?」
「《天女フィリア》なんて呼ばれて、モテモテでしたよね?」
「…………」
「フィリア?」
「私は…………」
さっきまで楽しそうだったフィリアの目が。
僅かに泳ぐ。
「…………」
レテが目を細めた。
「まさか……」
「…………」
「私に喋らせておいて」
「隠し事するつもりなんじゃ……」
「えっーと……」
「フィ〜リ〜ア〜?」
「…………」
じり。
レテが距離を詰める。
じり。
フィリアが後ろへ下がる。
「ちょ、ちょっと待って」
「何を待つんですか?」
「心の準備?」
「私はさせてもらえませんでしたけど?」
「いや、レテは勝手に喋って――」
「フィリア?」
「…………」
逃げ場が。
なくなった。
「……あはは」
「笑っても駄目です」
「…………」
「さあ」
今度は。
レテがにっこりと笑う。
「聞かせてもらいましょうか」
「…………」
女子会は。
まだ始まったばかりだった。




