宿にて
◇ ◇ ◇
帰り道。
俺たちは宣言通り、屋台という屋台に寄った。
ログとユノは麺。
フィリアは肉。
ヒルトは明日の朝にも食べられそうな焼き菓子を選び、ガオンも気になったものをいくつか買っていた。
もちろん。
俺もいっぱい買った。
その結果――。
「……買いすぎたな」
「誰のせいだと思ってんだ」
両手いっぱいに紙袋を抱えたログが、俺を見る。
「みんなだろ?」
「お前とフィリアが八割だ」
「私も⁉︎」
「お前もだよ」
「そんな買ってないよ!」
「その袋、ほとんどお前の肉だろ!」
「これは明日の分!」
「絶対今日食うだろ!」
そんなことを言い合いながら。
俺たちは宿へ戻った。
◇ ◇ ◇
「おお……!」
部屋の真ん中に、買ってきた食べ物がずらりと並ぶ。
串焼き。
パン。
焼き菓子。
果物。
それから、大量の肉。
「いただきまーす!」
「早っ⁉︎」
全部を並べ終えるより先に、フィリアが串焼きにかぶりついた。
「んー! おいひぃ!」
「まだ全部出してねぇだろ!」
ログが紙袋を抱えたまま叫ぶ。
「だって冷めちゃうじゃん!」
「お前、さっきも肉食ってただろ!」
「これは別の肉!」
「同じだろ!」
「違うよ!」
「何が違ぇんだよ!」
言い合う二人の横で。
ユノが別の紙袋へ手を伸ばした。
「麺」
「おい、それ俺の!」
「冷めますよ」
「……それはそうだな」
「納得するんだ……」
ヒルトが苦笑する。
「俺も食お!」
串焼きに手を伸ばすと、ガオンが呆れた顔で俺を見た。
「お前もまだ食うのか」
「ガオン食べないの?」
「…………」
ガオンが無言で肉を一本取る。
「食うんじゃん!」
「うるさい」
気づけば。
全員が好き勝手に食べ始めていた。
あれが美味い。
こっちも食べてみろ。
それは俺のだ。
そんなことを言いながら、みんなで笑う。
さっきまで泣いていたのが、なんだか嘘みたいだった。
「そういえば」
ヒルトが焼き菓子を一つ手に取った。
「食べ終わったらどうする?」
「あ?」
「このままずっとここにいるわけにもいかないでしょ?」
「ああ、部屋か」
俺とログ。
ヒルトとユノ。
フィリアとレテ。
そして――。
「俺はログの部屋だ」
ガオンが当然のように言った。
「……やっぱ来んの?」
「最初からそう言っているだろう」
「狭くなるんだけど」
「我慢しろ」
「俺の部屋だぞ⁉︎」
「アルトもいるだろう」
「そうだぞ!」
「お前は黙ってろ!」
「なんでだよ!」
「ふふっ」
レテが口元を押さえて笑う。
「それでは、食べ終わったらそれぞれの部屋に戻りましょうか」
「そうだね!」
フィリアが頷く。
そして。
レテを見る。
「…………」
「…………」
にやぁ。
フィリアの口元が緩んだ。
「……なんですか、その顔」
「別にー?」
「…………」
レテが露骨に目を逸らす。
「なんの話?」
俺が聞くと。
「アルトくんには関係ありません!」
「なんで俺だけ⁉︎」
「ふふふ」
フィリアが楽しそうに笑う。
「楽しみだなぁ、女子会」
「……はぁ」
レテが諦めたようにため息をついた。
なんなんだ?
さっきから。
「女って分かんねぇな」
ログが麺を啜りながら呟く。
「分かる」
ガオンが頷く。
「僕もです」
ユノまで頷いた。
「僕はそこに混ぜないでほしいなぁ」
ヒルトだけが苦笑する。
「でも、男子の方も何か話す?」
「男だけで?」
「うん。せっかくの旅行だし」
「お!」
なんか楽しそうだ。
「やろうぜ!」
「僕は枕投げもしたいです」
「まだ言ってんのかよ」
ログが麺を啜る。
「絶対やらねぇからな」
「では、ログさんから狙います」
「やる前提になってんじゃねぇか!」
「あはは!」
また笑い声が上がった。
こうして。
スパーナでの最初の夜は、まだまだ終わりそうになかった。




