誰かを守るために
◇ ◇ ◇
来た道を。
とぼとぼと。
リオネルは歩いていた。
「…………」
先ほどまでの勢いは。
見る影もない。
肩を落とし。
俯き。
人混みを抜けていく。
やがて。
元いた場所まで戻ると。
「ふぁぁ……」
セリオが。
退屈そうに立哨していた。
「…………」
「……セリオ殿……」
「あ?」
「……ありがとうございました……」
「おー」
セリオが。
ちらりとリオネルを見る。
「あー」
「見つかんなかったか?」
「まぁ花火なんざ」
「また別の機会に――」
「…………」
そこで。
セリオが眉を寄せた。
「どした?」
「ウンコでも踏んだか?」
「…………」
「…………」
「おーい?」
「セリオ殿……」
「ん?」
「惚れた女性が……」
「男に抱きついていたら」
「どうします……?」
「…………」
「あ?」
一拍。
「レ、レテが⁉︎」
セリオが。
目を見開く。
「誰に⁉︎」
「ヒルトか⁉︎」
「…………」
「いや……」
顎へ手を当てる。
「ログだな!」
「あいつ昔から」
「意外とモテんだよ!」
「いえ……」
リオネルが。
力なく首を振る。
「アルト殿に……」
「…………」
「…………あ?」
セリオの顔から。
表情が消える。
「…………」
「……そうか」
「あのクソガキ……」
すたすたすた。
「……?」
リオネルが。
顔を上げる。
「セリオ殿?」
「どこへ?」
「…………」
セリオが。
振り返る。
満面の笑みだった。
「決まってんだろ?」
「あのクソガキ」
「埋めに行くんだよ」
「やめてください!」
リオネルが。
慌てて腕を掴む。
「んでだよ!」
セリオが振り払おうとする。
「ムカつかねぇのかよ!」
「…………」
リオネルが。
俯く。
「……ムカつきます」
「だろ⁉︎」
「彼より」
「私の方がレテ殿を想っている」
「そう思っています」
ぎゅっと。
拳を握る。
「それに」
「絶対に幸せにできると」
「確信しています……!」
「だったら――!」
「だからこそ!」
「…………」
セリオが。
口を閉じる。
「だからこそ……」
リオネルが。
ゆっくりと。
顔を上げた。
「今は」
「剣を引くべきなのです」
「…………あ?」
「今」
「彼が傷つけば」
「レテ殿が悲しみます」
「…………」
「セリオ殿」
リオネルが。
腰に差した剣へ。
そっと手を添える。
「時には」
「誰かのために」
「誰かを守るために」
「剣を納めることも」
「必要なのです」
「…………」
セリオが。
眉間に皺を寄せる。
「気に食わねぇ!」
「子供みたいなことを!」
「うるせぇ!」
「俺はリオが良かったんだよ!」
「…………?」
リオネルが。
目を瞬く。
「……はい?」
「レテはな!」
セリオが。
苛立ったように。
頭を掻く。
「昔っから」
「色々抱え込みがちなんだよ!」
「隊のこと!」
「家族のこと!」
「民間人のこと!」
「なんでもかんでも!」
「自分で抱え込もうとしやがる!」
「…………」
「だから!」
「リオみたいな」
「頼れる奴になら……」
「…………」
リオネルが。
じっと。
セリオを見る。
「なんだよ」
「……なぜ」
「私のことをそこまで……?」
「知るか!」
「えぇ⁉︎」
「お前なら!」
セリオが。
リオネルを指差す。
「レテを守れると思ったんだよ!」
「バカなのに強いからな!」
「バカなのに!」
「二回言いましたね⁉︎」
「大事だからな!」
「…………」
リオネルが。
黙る。
「…………」
そして。
少しずつ。
その表情が。
明るくなっていく。
「……つまり」
「あ?」
「セリオ殿は」
「私のことを」
「信頼してくださっていると?」
「…………」
「まぁ……」
セリオが。
目を逸らす。
「そういう――」
「ぐっは⁉︎」
ガシャンッ!
金属音が響いた。
「セリオ殿……!」
「ぐっ……!」
リオネルが。
思い切り。
セリオを抱きしめていた。
「ありがとう……!」
「おま……!」
「鎧!」
「鎧で抱きつくな……!」
「私……!」
ぎゅうぅぅぅぅ。
「諦めません……!」
「痛ぇ!」
「分かった!」
「分かったから離せ!」
「セリオ殿〜〜〜!」
「だから鎧が……!」
その時。
「リオネルさーん」
遠くから。
気の抜けた声が聞こえてきた。
「交代の時間――」
ノエルが。
歩いてくる。
「…………」
足が止まった。
「…………」
抱きしめるリオネル。
抱きしめられるセリオ。
「…………」
ノエルが。
にっこり笑った。
「お邪魔しました〜」
くるっ。
「待て……」
ノエルが。
そのまま引き返していく。
「待て……!」
セリオが。
必死に手を伸ばす。
「たす……け……」
「セリオ殿〜〜〜!」
「ノエル!」
「戻ってこい!」
「ノエルぅぅぅ‼︎」
夜空に。
再び。
大きな花火が咲いた。
「セリオ殿〜〜〜!」
「離せっつってんだろぉぉぉ‼︎」




