変わってやるよ
◇ ◇ ◇
「リオネル班長!」
「!」
一人の兵士が。
リオネルの元へ駆け寄ってくる。
「周囲に異常ありません!」
「お疲れ様です」
リオネルが。
小さく頷く。
「引き続きよろしくお願いします」
「はっ!」
敬礼し。
兵士が持ち場へ戻っていく。
「…………」
その背中を見送る。
「ふぅ……」
リオネルは。
小さく息を吐いた。
そして。
夜空を見上げる。
――ドォォォン!
色鮮やかな花火が。
夜空いっぱいに咲き誇る。
「…………」
「レテ殿は……」
「この花火を見ているのだろうか……」
夜空に。
水色の髪をした少女の姿を思い浮かべる。
「暗がりで……」
「花火に照らされるレテ殿は……」
「さぞ美しいのだろうな……」
「何言ってんだ、お前」
「⁉︎」
リオネルが。
勢いよく振り返る。
「セ、セリオ殿⁉︎」
「いつから聞いてました……?」
「あ?」
セリオが。
面倒くさそうに答える。
「『ふぅ……レテ殿は……』から」
「最初から⁉︎」
「うるせぇな!」
「デケェ声出すな!」
「も、申し訳ない……」
「ったく……」
セリオが。
頭を掻く。
「…………」
そして。
夜空を見上げた。
「……変わってやるよ」
「はい?」
「だから」
セリオが。
リオネルの立っている場所を指差す。
「立哨」
「変わってやるよって言ってんだよ」
「…………」
「……え?」
「なんだよ」
「い、いや……」
「ですが!」
「指揮は……」
「だーいじょーぶ!」
セリオが。
ひらひらと手を振る。
「俺の気が変わらんうちに」
「さっさと行け」
しっ。
しっ。
犬でも追い払うように。
手を振る。
「…………!」
リオネルが。
両手で頭を抱えた。
「…………」
「…………!」
「…………」
「何やってんだ?」
「考えております!」
「何をだよ」
「…………!」
そして。
顔を上げる。
「すぐ戻ります!」
「おう」
セリオが。
にやりと笑った。
「期待しないで待っとく」
「どういう意味ですか‼︎」
「いいから早く行けよ‼︎」
「は、はい!」
リオネルが。
人混みへ向かって駆け出す。
「ったく……」
セリオが。
その背中を見送る。
「やれやれ……」
「手がかかるぜ」
「セリオ殿‼︎」
「あぁ⁉︎」
リオネルが。
少し離れたところで。
振り返っていた。
「んだよ!」
「うるせぇな!」
「――ありがとう!」
「…………」
セリオが。
一瞬。
目を丸くする。
「…………」
そして。
そっぽを向いた。
「………バーカ」
◇ ◇ ◇
人。
人。
人。
「くっ……!」
多い!
この人混みの中で。
レテ殿を。
見つけられるだろうか……。
「…………」
いや!
見つける!
セリオ殿が。
せっかく作ってくれた機会!
無駄にはしない!
リオネルは。
人と人の間を縫うように。
広場を進んでいく。
水色。
水色の髪。
どこだ。
どこに――。
「…………!」
その時。
人混みの向こう。
花火の光に照らされた。
水色の髪が。
目に入った。
「いた!」
思わず。
顔が綻ぶ。
「レテ――」
一歩。
踏み出す。
「……ど……」
そして。
見えた。
「……の……」
「…………」
レテが。
アルトを。
抱きしめていた。
「…………」
――ドォォォン!
夜空に。
大輪の花火が咲く。
「…………」
その光に照らされながら。
リオネルは。
ただ。
立ち尽くした。
「…………」
「………終わった……」




