夜に向かって
◇ ◇ ◇
「おぉー!」
アルトが。
店先へ駆け寄る。
「なんだこれ!」
「アルトくん!」
レテが。
慌てて後を追う。
「急に走らないでください!」
「見ろよ、レテ!」
「剣がいっぱいある!」
「聞いてますか⁉︎」
そこは。
大通りに面した。
一軒の武具店。
店先には。
大小様々な剣が並んでいた。
「うおぉ……」
アルトの隣。
ログも。
目を輝かせる。
「いいな……」
「ログまで……」
レテが。
小さく息を吐く。
「へぇ」
ガオンが。
一本の剣を眺める。
「やはりスパーナは剣が多いな」
「騎士の国だもんね」
ヒルトも。
店先を覗き込む。
「ガイストとは結構違うね」
「…………」
アルトが。
一本。
また一本と。
剣を眺めていく。
「これ細いな!」
「こっちは短い!」
「こっちなんか盾まであるぞ!」
「アルト」
ログが。
呆れたように笑う。
「武器屋なんだから、そりゃあるだろ」
「でもこんなにいっぱいあるんだぞ!」
「まぁ、それは分かる」
「でしょ?」
「…………」
フィリアが。
そんな二人を眺める。
「男の子って」
「こういうの好きだよねぇ」
「フィリアは興味ないの?」
ヒルトが尋ねる。
「ない!」
「即答なんだ」
「武器より――」
フィリアの鼻が。
ぴくりと動いた。
「…………」
「肉」
「また?」
「ヒール」
「なに?」
「あっちからいい匂いする」
「さっき食べたよね?」
「それとこれとは別!」
「別じゃないよ」
「行ってくる!」
「待って!」
走り出そうとした。
フィリアの服を。
ヒルトが掴む。
「ぐえっ」
「勝手に行かない」
「離してぇ!」
「迷子になるでしょ」
「ならない!」
「アルトと同じこと言ってるよ」
「誰がアルトだ!」
「俺⁉︎」
アルトが。
勢いよく振り返った。
「なんで俺が出てくんだよ!」
「ほら」
ヒルトが。
フィリアを見る。
「そっくり」
「…………」
「…………」
アルトとフィリアが。
顔を見合わせる。
「似てない!」
「似てねぇ!」
「そこまで一緒……」
ヒルトが。
苦笑した。
「ところで」
ユノが。
辺りを見渡す。
「僕の麺料理はどこでしょうか」
「知らねぇよ」
ログが。
剣から目を離さず答える。
「まだ探してたのか」
「もちろんです」
「諦めろよ」
「嫌です」
「妙なところで頑固だな」
「旅先の麺は重要ですからねぇ」
「何が重要なんだよ」
「文化です」
「絶対食いてぇだけだろ」
「否定はしません」
「…………」
そんなやり取りをしながら。
一行は。
再び大通りを進んでいく。
土産物を並べる店。
色鮮やかな布を吊るした露店。
花で飾られた窓辺。
路上では。
楽器を奏でる者たちを囲み。
子どもたちが。
楽しそうに踊っている。
「…………」
アルトは。
右を見て。
左を見て。
また右を見る。
「すげぇな!」
「さっきからそればっかりですね」
レテが。
くすっと笑う。
「だってすげぇんだもん!」
「ふふっ」
「そうですね」
レテも。
白い街並みを見渡す。
「私も」
「来てよかったです」
「だろ!」
「なぜアルトくんが得意そうなんです?」
「分かんねぇ!」
「分からないんですか……」
「レテ!」
「はい?」
「次あっち行こう!」
「はいはい」
アルトが。
人混みの先を指差す。
その向こう。
白い建物の間から。
《追憶の白塔》が。
空高く伸びている。
夜には。
あの場所で。
《継剣の儀》が行われる。
だが。
今のアルトの頭にあるのは。
「なんか甘い匂いする!」
「肉じゃないんだ」
フィリアが。
少し残念そうに呟く。
「甘いの⁉︎」
今度は。
ヒルトが反応した。
「あ」
ログが笑う。
「こっちも食いついた」
「いいでしょ、別に!」
「行こうぜ!」
「うん!」
「ちょっと待ってください!」
また走り出した二人を。
レテが追いかける。
「…………」
ガオンが。
その背中を眺める。
「騒がしいな」
「ですねぇ」
ユノが。
いつもの笑みを浮かべる。
「でも」
「旅行らしくていいんじゃないですか?」
「…………」
ガオンが。
小さく笑った。
「そうだな」
祭りを待つ王都に。
七人の笑い声が。
賑やかに溶けていった。




