賑やかな夜
「――って!」
リオネルが。
はっとしたように振り返った。
「セリオ殿!」
「あ?」
「我々は夜に向けての警戒任務中です!」
「あー」
セリオが。
残っていたケルンへ齧りつく。
「それなー」
「それなー、ではありません!」
「でも腹減ってよ」
「セリオ殿?」
「…………」
リオネルの笑顔が。
僅かに引きつる。
「…………」
セリオが。
目を逸らした。
「はい。ごめんなさい」
「まったく……」
「夜?」
レテが。
首を傾げる。
「夜に何かあるんですか?」
「ああ、はい!」
リオネルが。
すぐにレテへ向き直る。
「今夜、《継剣の儀》が行われるのです」
「けいけん?」
アルトが。
首を傾げる。
「はい」
「王国祭で行われる、大切な儀式の一つです」
リオネルが。
王都の奥。
白い塔へ目を向ける。
「その際、スパーナの宝剣が一般に公開されます」
「宝剣⁉︎」
ログが。
真っ先に食いついた。
「見たい!」
アルトも。
すぐに声を上げる。
「確かに」
ユノが。
いつもの笑みを浮かべる。
「それは興味がありますね」
「花火も上がりますので」
リオネルが笑う。
「夜はかなり賑やかになりますよ」
「花火!」
フィリアが。
ぱっとヒルトを見る。
「ヒール! 観にいこう!」
「そのつもりだよ」
ヒルトが。
当たり前のように笑った。
「…………」
ガオンが。
少し考えるように。
顎へ手を添える。
「女王も来るのか?」
「もちろんです」
リオネルが頷く。
「パメラ女王もご臨席されます」
「…………」
ガオンの顔が。
僅かに曇った。
「……俺はやめておく」
「だめだ」
セリオが。
即座に言った。
「来い」
「なぜだ!」
「面白そうだからだ」
「何がだ!」
「王子と女王」
「面白がるな!」
「ははっ!」
セリオが。
楽しそうに笑う。
「リオネルさんも」
レテが尋ねる。
「《継剣の儀》を見られるんですか?」
「…………!」
リオネルの表情が。
一瞬。
明るくなる。
だが。
すぐに首を横へ振った。
「私は警戒任務がありますので」
「そうなんですね……」
「大変だな」
セリオが言った。
「…………」
リオネルが。
ゆっくりと。
隣を見る。
「いい加減怒りますよ?」
「ごめんなさい」
返事だけは。
やけに早かった。
「なぁ!」
アルトが。
リオネルへ顔を向ける。
「その宝剣って、どんなの?」
「それは――」
リオネルが。
僅かに笑う。
「見てからのお楽しみにしておきましょう」
「えー!」
「そうだぞ、アルト!」
ログが。
アルトの肩を叩く。
「楽しみにしようぜ!」
「…………」
ヒルトが。
そんなログを見て。
小さく笑った。
「ははっ」
「ログ、楽しそうだね」
「そりゃな!」
ログが。
珍しく目を輝かせる。
「宝剣だぞ?」
そして。
リオネルを見る。
「リオネルさん、《継剣の儀》って何時からですか?」
「二十時からです」
「ただ――」
リオネルが。
賑わう王都を見渡す。
「かなりの人が集まります」
「近くでご覧になりたいのであれば、早めに場所を取っておいた方がいいでしょう」
「どこでやるんだ?」
「《追憶の白塔》の前です」
「…………」
アルトが。
顔を上げた。
白い建物の隙間。
王都のどこからでも。
その姿を覗かせる。
巨大な白い塔。
「あそこか」
「はい」
リオネルが頷く。
「今夜二十時」
「《追憶の白塔》前にて――」
「《継剣の儀》が執り行われます」
「よし!」
アルトが。
拳を握った。
「絶対見る!」
「俺もだ!」
ログも。
すぐに続く。
「じゃあ決まりだね」
ヒルトが笑う。
「それまでは王都を見て回ろうか」
「賛成!」
フィリアが。
元気よく手を上げた。
「僕は麺料理を探したいですねぇ」
「まだ諦めてなかったのかよ」
ログが呆れる。
「当然です」
ユノが。
にこりと笑った。
「旅先の麺料理は重要ですから」
「よし!」
アルトが。
勢いよく通りの先を指差す。
「じゃあ次行こうぜ!」
「お前は何探すんだ?」
「肉!」
「知ってた」
「私も!」
フィリアが。
アルトの隣へ並ぶ。
「フィリア」
ヒルトが。
その背中へ声をかける。
「さっき食べたばっかりでしょ?」
「歩けばお腹減るから大丈夫!」
「何が大丈夫なの……」
賑やかな声が。
王都の喧騒へ。
溶けていく。
その遥か先。
白い街並みを見下ろすように。
《追憶の白塔》が。
静かに。
空へ伸びていた。




