賑やかな来訪
◇ ◇ ◇
「セリオ殿!」
人混みの向こうから。
声が飛んできた。
「勝手に離れて……!」
「あ?」
セリオが振り返る。
一人の青年が。
人々の間を縫うように。
こちらへ駆けてくる。
「急に姿が見えなくなったと思えば――」
そこまで言って。
足が止まった。
「…………」
目が。
大きく見開かれる。
「レテ殿⁉︎」
「あっ!」
レテも。
ぱっと表情を明るくする。
「リオネルさん!」
「な、なぜここに⁉︎」
「お手紙ありがとうございました!」
レテが。
嬉しそうに笑った。
「来ちゃいました!」
「えぇ⁉︎」
リオネルの顔が。
一気に明るくなる。
「お返事をいただければ、お迎えに行きましたのに……!」
「あ……」
レテが。
申し訳なさそうに眉を下げる。
「お返事は書いたんですけど……」
「間に合わなかったみたいですね……ごめんなさい」
「いや!」
リオネルが。
ぶんぶんと首を振る。
「レテ殿が悪いわけでは!」
「王国祭が近いせいか、郵便も混み合っておりますから!」
「よかった……」
レテが。
ほっとしたように笑う。
「…………」
リオネルも。
嬉しそうに笑った。
「…………」
その様子を。
フィリアが。
じーっと見ている。
「…………」
口元が。
僅かに緩んだ。
「何?」
隣のヒルトが尋ねる。
「んーん」
フィリアは。
楽しそうに笑う。
「なんでもない」
「?」
「なんだ」
セリオが。
ケルンを齧りながら口を挟む。
「リオがこいつら呼んだのか」
「こいつら?」
「…………」
リオネルが。
ようやく。
レテの周囲へ目を向けた。
「…………」
ログ。
アルト。
ヒルト。
フィリア。
ユノ。
そして。
ガオン。
「…………」
多い。
明らかに。
多い。
「お久しぶりっす」
ログが。
ケルンを齧りながら。
軽く頭を下げる。
「え、ええ」
リオネルも。
咄嗟に頭を下げる。
「お久しぶりです」
「おふがふごっ!」
「…………」
アルトは。
ケルンを口いっぱいに詰めたまま。
手を上げている。
「アルト……」
ヒルトが。
呆れた顔をする。
「飲み込んでから喋りなよ」
「んぐっ!」
ごくん。
「久しぶり!」
「ええ……お久しぶりです」
続いて。
ヒルトが。
丁寧に頭を下げる。
「お招きありがとうございます」
ユノも。
それに続いた。
「ありがとうございます」
「い、いえ……」
リオネルが。
僅かに困ったように笑う。
「皆さんも……いらしたのですね」
「…………」
フィリアが。
その一言に。
ぴくりと反応した。
「ははは……」
申し訳なさそうに。
片手を上げる。
「どーもー……」
「……?」
レテが。
フィリアを見る。
「どうしたんですか?」
「なんでもないよ!」
フィリアは。
にこっと笑った。
リオネルが。
レテへ送った手紙。
その意味を。
この中で。
フィリアだけは。
なんとなく察していた。
「…………」
そして。
リオネルの視線が。
最後の一人へ向く。
「…………」
ガオンは。
ケルンを齧りながら。
リオネルを見ていた。
「…………」
「…………」
リオネルが。
一度。
瞬きをする。
「…………⁉︎」
「が、ガオン王子⁉︎」
「ん?」
「なぜこちらに⁉︎」
「あー」
セリオが。
横から口を挟む。
「こいつ今、ガイストに留学中でな」
「それは知っています!」
リオネルが。
すぐさま言い返す。
「そうではなく!」
そして。
はっとする。
「それに!」
「王族に『こいつ』などと!」
「いい」
ガオンが。
あっさりと言った。
「…………⁉︎」
「俺は気にしていない」
「し、しかし……」
「いい」
「…………」
リオネルが。
困惑したまま。
口を閉じる。
「くくっ」
セリオが。
その様子を見て。
楽しそうに笑った。
「こいつと俺」
親指で。
ガオンを指す。
「初対面で喧嘩してな」
「喧嘩⁉︎」
「俺が勝った」
セリオが。
にやりと笑う。
「だからこれでいいんだよ」
「何が『だから』なのですか⁉︎」
「…………」
アルトが。
ケルンを齧りながら。
ガオンを見る。
「ガオンって」
「あ?」
「みんなと喧嘩してんの?」
「…………」
ガオンが。
アルトを見る。
「お前も似たようなものだろう」
「俺⁉︎」
「違うのか?」
「違うだろ!」
「…………」
セリオが。
鼻で笑う。
「似たようなもんだろ」
「お前に言われたくない!」
「なんだと?」
「ほら!」
ヒルトが。
すぐに二人の間へ入った。
「また喧嘩しない!」
「俺は悪くない!」
「俺も悪くねぇ」
「二人ともだよ!」
「…………」
そんな騒ぎの横で。
リオネルは。
もう一度。
レテを見る。
「…………」
来てくれた。
それは。
心から嬉しい。
ただ。
想像していたより。
随分と。
賑やかな来訪になっていた。
「…………」
その表情を見て。
フィリアだけが。
くすっと。
小さく笑った。




