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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
休暇

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別の気配

 少し離れた。


 通りの端。


 八人は。


 それぞれ買ったケルンを頬張っていた。


「ん〜!」


 フィリアが。


 頬を押さえる。


「おいひぃ!」


「だから飲み込んでから喋りなって」


 ヒルトが苦笑する。


「ヒールも食べてみて!」


「僕も買ったよ」


「私のも!」


「同じ店の同じやつでしょ?」


「私の方がおいしいかもしれない!」


「そんなわけないでしょ」


 少し離れたところでは。


 ログも。


 ケルンへ齧りつく。


「……うめぇな」


「だろ!」


 アルトが。


 得意げに笑う。


「なんでお前が自慢すんだよ」


「美味いから!」


「意味分かんねぇ」


「…………」


 そのやり取りを横目に。


 セリオが。


 ケルンを一口齧る。


「……悪くねぇな」


「だろ!」


「だからなんでお前が自慢すんだよ」


「みんなそれ言うな!」


「お前が言わせてんだろ」


「なんだと!」


「はいはい」


 ヒルトが。


 二人の間へ入る。


「食べてる時くらい喧嘩しない」


「俺はしてない!」


「俺もしてねぇよ」


「してるよ」


 ヒルトが。


 即答した。


「…………」


 セリオは。


 面倒そうに鼻を鳴らす。


 そして。


 何気なく。


 レテへ視線を向けた。


「…………」


 僅かに。


 目を細める。


 次に。


 ログ。


 ヒルト。


 フィリア。


 一人ずつ。


 確かめるように。


 視線を動かしていく。


「……?」


 レテが。


 その視線に気づいた。


「どうしました?」


「お前ら」


「あ?」


 ログが振り返る。


「ようやく一人前かよ!」


「は?」


 フィリアが。


 眉を寄せた。


「何それ」


「そのまんまの意味だ」


「だから何が?」


「霊器」


「…………!」


 レテが。


 目を見開く。


「分かるんですか?」


「あ?」


 セリオが。


 何を当たり前のことを。


 と言わんばかりに眉を寄せる。


「分かるだろ」


「分かんねぇよ」


 ログが。


 即答した。


「そうか?」


「そうだよ」


 ヒルトが苦笑する。


「相変わらずだね、セリオさん」


「…………」


 セリオは。


 もう一度。


 四人を見渡した。


 以前とは違う。


 纏う空気。


 精霊との繋がり。


 僅かに混じる。


 人とは違う気配。


 それを。


 セリオは感覚だけで捉えていた。


「まぁ」


 セリオが。


 ケルンへ齧りつく。


「多少はマシになったみてぇだな」


「やっぱり言い方ムカつく!」


 フィリアが。


 頬を膨らませる。


「褒めてんだよ」


「どこが⁉︎」


「…………」


 セリオは。


 前を向く。


 そして。


 誰にも聞こえないほど。


 小さな声で。


「……よくやった」


「ん?」


 アルトが。


 首を傾げた。


「なんか言った?」


「なんも言ってねぇよ」


「言っただろ」


「言ってねぇ」


「絶対言った!」


「うるせぇな」


 セリオが。


 アルトを見る。


「…………」


 その視線が。


 一瞬。


 止まった。


「なんだよ」


 アルトが。


 露骨に嫌そうな顔をする。


「じろじろ見んなよ」


「お前……」


「あ?」


 セリオが。


 眉を寄せる。


「相変わらず気持ち悪りぃな」


「はぁ⁉︎」


 アルトが。


 声を上げた。


「なんだよそれ!」


「そのまんまの意味だ」


「久しぶりに会って言うことがそれかよ!」


「事実だろ」


「どこがだ!」


「全部」


「全部⁉︎」


「セリオさん」


 ヒルトが。


 すぐさま二人の間へ入る。


「アルトに喧嘩売らないでよ」


「売ってねぇよ」


「売ってるだろ!」


「うるせぇな」


「…………」


 そう言いながら。


 セリオは。


 もう一度。


 アルトを見る。


「…………?」


 僅かに。


 眉が動いた。


 妙な奴。


 それは。


 以前から変わらない。


 精霊との繋がりは。


 感じない。


 それなのに。


 人間としては。


 あまりにも膨大な魔力を。


 その身に抱えている。


 だが。


 今は。


 それだけではない。


「…………」


 なんだ。


 これは。


 アルト自身の魔力とは。


 別の何か。


 もっと奥。


 身体の内側から。


 微かに。


 別の気配がする。


「…………」


 セリオが。


 さらに目を細める。


 精霊――。


 いや。


 何か違う。


「……なんだよ」


 アルトが。


 一歩退いた。


「まだなんかあんのか?」


「…………いや」


 セリオは。


 視線を外す。


「やっぱ気持ち悪りぃ」


「結局それかよ!」


「アルト」


 ヒルトが。


 アルトの肩を掴む。


「落ち着いて」


「だってこいつ!」


「セリオさんも!」


「俺は何もしてねぇだろ」


「してるよ!」


「…………チッ」


 セリオが。


 面倒そうに舌打ちする。


「ほんっとムカつく!」


 アルトが。


 残っていたケルンへ。


 勢いよく齧りついた。


「…………」


 そんなアルトを。


 セリオは。


 もう一度だけ。


 横目で見る。


 やはり。


 何かがいる。


 だが。


 それが何なのかまでは。


 分からない。


「…………」


 セリオは。


 何も言わず。


 残ったケルンを。


 一口齧った。

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