↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
休暇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

550/672

強くなれ

     ◇ ◇ ◇


 ポタージュを平らげ。


 再び大通りへ。


「あった!」


 アルトが。


 人混みの向こうを指差した。


 先ほど。


 馬車の中から見つけた露店。


 鉄板の上では。


 太い腸詰めが何本も並び。


 じゅうじゅうと。


 脂を弾けさせている。


「《ケルン》だ!」


 店先に掲げられた文字を。


 アルトが読み上げる。


「並ぼ!」


 フィリアが。


 すぐさま列へ向かう。


「おう!」


「まだ食べるんだ……」


 ヒルトが呟く。


「ヒールも食べるでしょ?」


「まぁ……食べるけど」


「ほら!」


「何が『ほら』なの」


 王国祭を目前に控えているからか。


 露店の前には。


 既に長い列ができていた。


 七人も。


 その最後尾へ並ぶ。


「…………」


 アルトが。


 前の客が受け取ったケルンを覗き込む。


 細長いパン。


 その中央には。


 焼き目のついた太い腸詰め。


 炒めた玉ねぎに。


 刻んだ香草。


 仕上げに。


 店主がとろりとしたソースをかける。


「…………」


 ごくり。


「まだ?」


「並んだばっかりですよ」


 レテが笑う。


「腹減った」


「さっき食べたでしょう?」


「ポタージュはポタージュだろ?」


「パイも食べてたよね?」


「パイはパイだろ?」


「アルト」


 フィリアが。


 真剣な顔で頷く。


「分かるよ」


「だよな!」


「分かっちゃうんだ……」


 ヒルトが苦笑した。


 その時。


「――うるせぇと思ったら」


 後ろから。


 聞き覚えのある声がした。


「…………」


 アルトの表情が。


 ぴたりと固まる。


「やっぱりお前らかよ」


 ゆっくり。


 振り返る。


「…………げ」


「あ?」


 そこに立っていたのは。


 セリオだった。


「セリオさん?」


 レテが。


 目を丸くする。


「なんだ」


 セリオが。


 面倒そうに一行を見る。


「お前らも来てたのか」


「セリオさんも王国祭に?」


 ヒルトが尋ねる。


「まぁな」


「…………」


 アルトだけが。


 露骨に嫌そうな顔をしていた。


「なんだよ」


 セリオが。


 その視線に気づく。


「……別に」


「言いてぇことあるなら言えよ」


「ない」


「ある顔してんだろ」


「ない!」


「じゃあこっち見んな」


「そっちが話しかけてきたんだろ!」


「あ?」


「ほら」


 ヒルトが。


 すぐに二人の間へ入る。


「会って早々やめなって」


「俺はなんもしてねぇだろ」


「誰のせいだよ……」


 アルトが。


 ぼそりと呟く。


「あ?」


「なんでもない!」


 ぷいっ。


 アルトが前を向く。


「俺はケルン食いに来たんだ!」


「俺もだよ」


「…………」


「…………」


「後ろ並べよ」


「言われなくても並ぶわ」


 セリオが。


 一行の後ろへ並ぶ。


 そんな中。


「…………」


 ユノが。


 セリオをじっと見ていた。


「あ?」


 セリオが。


 その視線に気づく。


「なんだお前」


「ああ、すみません」


 ユノが。


 いつもの笑みを浮かべる。


「初めまして」


「ユノ・フェルメルです」


「……誰だ?」


「ですよねぇ」


 ユノが笑う。


「僕はセリオさんのこと、知ってますけど」


「そりゃよかったな」


「思っていたより怖そうな人ですね」


「喧嘩売ってんのか?」


「褒めてます」


「どこがだよ」


 セリオが。


 面倒そうに息を吐く。


「……で」


 ユノを。


 もう一度見る。


「お前、どこの隊だ?」


「元バルガス隊で」


 ユノが答える。


「今はアーヴェル隊です」


「…………」


 セリオの表情が。


 僅かに変わった。


「……おっさん」


 少しだけ。


 声が低くなる。


「元気にしてるか?」


「えぇ」


 ユノが頷く。


「相変わらずですよ」


「そうか……」


「…………」


 それだけ。


 短く答え。


 セリオは前を向く。


 列が。


 一つ進んだ。


 そのまま。


 何事もなかったように歩き出して。


「……ユノっていったか?」


「はい」


「お前」


 セリオが。


 振り返る。


「強くなれ」


「…………」


 ユノの笑みが。


 ほんの僅かに消えた。


「……はい」


 それ以上。


 セリオは何も言わなかった。


 ユノも。


 何も聞かなかった。


 ただ。


 再び列が進む。


「次の人ー!」


 店主の声が響いた。


「あっ!」


 アルトが。


 すぐさま前を見る。


「あと二人!」


「お前ずっと数えてたのかよ」


 セリオが呆れる。


「うるさい!」


「なんだその態度」


「セリオさんがいると飯が不味くなる!」


「なら食うな」


「それは嫌だ!」


「じゃあ黙ってろ」


「お前が黙れ!」


「二人とも!」


 ヒルトの声が。


 再び大通りに響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。