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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
休暇

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548/676

王都②

 大通りを進み。


 途中の角を右へ。


 人通りが少し落ち着いた通りに。


 目的の宿はあった。


「ここです」


 レテが足を止める。


「おお!」


 アルトが。


 建物を見上げた。


 三階建ての。


 白い石造りの宿。


 入口には。


 王国祭を祝う色鮮やかな花飾りが掛けられている。


「よし! 荷物置いたらパイな!」


「肉も!」


「分かってるって」


 ヒルトが苦笑する。


 扉を開けると。


 小さな鈴が鳴った。


「いらっしゃい!」


 奥から。


 恰幅のいい店主が顔を出す。


「予約していた者です」


「ああ、聞いてるよ」


 レテが名前を告げると。


 店主は帳簿を開き。


 人数を確認していく。


「…………ん?」


 そして。


 七人を見渡した。


「一人多くないか?」


「はい……」


 レテが。


 ちらりとガオンを見る。


「急遽、一人増えてしまいまして」


「部屋、空いてる?」


 アルトが尋ねる。


「あー……」


 店主は。


 申し訳なさそうに首を振った。


「悪いね。満室だ」


「やっぱりですか……」


 レテが。


 小さく息を吐く。


「まぁ」


 ログが。


 辺りを見回す。


「祭りの前だから、そりゃそうだわな」


「この時期は毎年こんなもんさ」


 店主も笑う。


「王国祭が近づくと、王都中の宿が埋まっちまう」


「…………」


 ガオンが。


 少し考える。


「相部屋は可能か?」


「相部屋?」


「ああ」


 ガオンが。


 ログの肩へ手を置いた。


「こいつの部屋に泊まる」


「なんで俺を触る」


「まぁ」


 店主が。


 二人を交互に見る。


「金さえ払ってくれりゃ構わないさ」


「本当か?」


「ただ、ベッドは増やせないぞ?」


「問題ない」


「寝袋なら貸してやるよ」


「十分だ」


 ガオンが。


 満足そうに頷く。


 そして。


 ログを見る。


「決まりだな、ログ」


「…………」


 ログは。


 しばらく黙っていたが。


「……はぁ」


 深い。


 深い溜息を吐いた。


「もう好きにしろ」


「世話になる」


「嬉しそうにすんな」


「そう見えるか?」


「見える」


「気のせいだ」


「やっぱり怪しいね」


 フィリアが。


 二人をじっと見る。


「怪しいですねぇ」


 ユノも続く。


「だから何もない」


「ほんとかなぁ?」


「…………」


 ガオンは。


 答えなかった。


「まぁいいじゃん!」


 アルトが笑う。


「ログん家でも一緒に寝てたんだし!」


「お前は黙ってろ」


「なんで⁉︎」


「ほら」


 ヒルトが。


 アルトの荷物を指差す。


「早く部屋に置いてきなよ」


「そうだった!」


 アルトの目が。


 輝く。


「パイ!」


「肉!」


 フィリアも続く。


「忘れてなかったんだ……」


「忘れるわけないだろ!」


「忘れるわけないでしょ!」


「そこだけ息ぴったりだね……」


 ヒルトが。


 呆れたように笑う。


 それぞれ。


 店主から部屋の鍵を受け取り。


 階段へ向かう。


 その最後尾。


「ログ」


「あ?」


「寝袋は俺が使う」


「当たり前だ」


「あと、夜に少し話がある」


「……まだ言ってんのかよ」


「ああ」


「何の話だ?」


「それは夜だ」


「…………」


 ログが。


 訝しげにガオンを見る。


「お前、マジでなんなんだよ」


「気にするな」


「気になる言い方すんな」


 ガオンは答えず。


 そのまま階段を上っていく。


 その背中を見ながら。


 ログは。


 もう一度。


 深く溜息を吐いた。

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