王都②
大通りを進み。
途中の角を右へ。
人通りが少し落ち着いた通りに。
目的の宿はあった。
「ここです」
レテが足を止める。
「おお!」
アルトが。
建物を見上げた。
三階建ての。
白い石造りの宿。
入口には。
王国祭を祝う色鮮やかな花飾りが掛けられている。
「よし! 荷物置いたらパイな!」
「肉も!」
「分かってるって」
ヒルトが苦笑する。
扉を開けると。
小さな鈴が鳴った。
「いらっしゃい!」
奥から。
恰幅のいい店主が顔を出す。
「予約していた者です」
「ああ、聞いてるよ」
レテが名前を告げると。
店主は帳簿を開き。
人数を確認していく。
「…………ん?」
そして。
七人を見渡した。
「一人多くないか?」
「はい……」
レテが。
ちらりとガオンを見る。
「急遽、一人増えてしまいまして」
「部屋、空いてる?」
アルトが尋ねる。
「あー……」
店主は。
申し訳なさそうに首を振った。
「悪いね。満室だ」
「やっぱりですか……」
レテが。
小さく息を吐く。
「まぁ」
ログが。
辺りを見回す。
「祭りの前だから、そりゃそうだわな」
「この時期は毎年こんなもんさ」
店主も笑う。
「王国祭が近づくと、王都中の宿が埋まっちまう」
「…………」
ガオンが。
少し考える。
「相部屋は可能か?」
「相部屋?」
「ああ」
ガオンが。
ログの肩へ手を置いた。
「こいつの部屋に泊まる」
「なんで俺を触る」
「まぁ」
店主が。
二人を交互に見る。
「金さえ払ってくれりゃ構わないさ」
「本当か?」
「ただ、ベッドは増やせないぞ?」
「問題ない」
「寝袋なら貸してやるよ」
「十分だ」
ガオンが。
満足そうに頷く。
そして。
ログを見る。
「決まりだな、ログ」
「…………」
ログは。
しばらく黙っていたが。
「……はぁ」
深い。
深い溜息を吐いた。
「もう好きにしろ」
「世話になる」
「嬉しそうにすんな」
「そう見えるか?」
「見える」
「気のせいだ」
「やっぱり怪しいね」
フィリアが。
二人をじっと見る。
「怪しいですねぇ」
ユノも続く。
「だから何もない」
「ほんとかなぁ?」
「…………」
ガオンは。
答えなかった。
「まぁいいじゃん!」
アルトが笑う。
「ログん家でも一緒に寝てたんだし!」
「お前は黙ってろ」
「なんで⁉︎」
「ほら」
ヒルトが。
アルトの荷物を指差す。
「早く部屋に置いてきなよ」
「そうだった!」
アルトの目が。
輝く。
「パイ!」
「肉!」
フィリアも続く。
「忘れてなかったんだ……」
「忘れるわけないだろ!」
「忘れるわけないでしょ!」
「そこだけ息ぴったりだね……」
ヒルトが。
呆れたように笑う。
それぞれ。
店主から部屋の鍵を受け取り。
階段へ向かう。
その最後尾。
「ログ」
「あ?」
「寝袋は俺が使う」
「当たり前だ」
「あと、夜に少し話がある」
「……まだ言ってんのかよ」
「ああ」
「何の話だ?」
「それは夜だ」
「…………」
ログが。
訝しげにガオンを見る。
「お前、マジでなんなんだよ」
「気にするな」
「気になる言い方すんな」
ガオンは答えず。
そのまま階段を上っていく。
その背中を見ながら。
ログは。
もう一度。
深く溜息を吐いた。




