英雄国家 スパーナ
◇ ◇ ◇
「スパーナだ!」
アルトの声が。
客車の中へ響いた。
「おぉ……」
ログが。
眠気の残る目を擦りながら。
窓の外を見る。
「でけぇな……」
遥か先。
緩やかな丘陵の向こうに。
巨大な街が姿を現していた。
「あの白い塔が」
ガオンが。
窓の向こうを指差す。
「スパーナに生きた英霊たちを偲び、その意志を後世へ継ぐための場所――」
空へ向かって。
真っ直ぐ伸びる白亜の塔。
「《追憶の白塔》だ」
「追憶の……白塔」
ヒルトが。
その名を呟く。
「アルト」
ガオンが横を見る。
「お前も見覚えがあるんじゃないか?」
「うん!」
アルトが頷く。
「あれは覚えてる!」
そして。
すぐ隣へ顔を向ける。
「レテも見て!」
「はいはい」
レテが。
アルトに急かされながら窓の外を見る。
「…………」
そして。
思わず息を呑んだ。
「……すごい……」
緩やかな丘陵の先。
まず目に飛び込んでくるのは。
王都を囲う。
白亜の城壁。
その内側には。
赤茶や青灰色の屋根を持つ石造りの建物が。
幾重にも連なっている。
街の中央には。
一本の大通りが。
王都を貫くように真っ直ぐ伸び。
その先。
小高い丘の上には。
街全体を見守るように。
巨大な王城が聳えていた。
そして。
何よりも目を引くのが。
街の中心から。
空へ向かって伸びる。
一本の白い塔。
周囲のどの建物よりも高く。
遠く離れた街道からでも。
その姿だけは。
はっきりと見える。
――《追憶の白塔》。
この国で生き。
この国を守り。
そして。
長い歴史の中で散っていった英霊たち。
彼らを偲び。
その意志を。
後世へと継いでいくための場所。
白い塔は。
千年という時を越え。
今も王都の中心に立ち続けている。
「綺麗……」
フィリアも。
窓へ顔を寄せる。
「ガイストとは全然違うね」
「建物も随分古そうですね」
ユノが言う。
「歴史の長い国だからな」
ガオンが答える。
その時。
風が吹いた。
城壁の上で。
いくつもの旗が大きく靡く。
王都へ続く街道にも。
色鮮やかな旗や飾りが並び。
近づくにつれて。
その数は増えていく。
「あ!」
アルトが。
それを見つける。
「なんかいっぱい飾ってある!」
「王国祭が近いからでしょうね」
レテが答える。
「お祭り……」
フィリアの目が輝く。
「ってことは!」
アルトも。
負けじと目を輝かせる。
「もう屋台あるかな⁉︎」
「結局食べ物かよ」
ログが笑う。
「だって祭りだぞ!」
「まだ着いてもねぇよ」
「もう見えてるじゃん!」
「見えてるのと着いてるのは違うだろ」
「あとちょっとだ!」
アルトが。
再び窓へ張り付く。
白亜の城壁。
丘の上に聳える王城。
王国祭を前に。
色鮮やかな装飾を纏った街並み。
そして。
その全てを見守るように立つ。
《追憶の白塔》。
七人を乗せた馬車は。
長い歴史を持つ王国。
スパーナへと。
ゆっくり近づいていった。




