道中での休憩
◇ ◇ ◇
「おーい! そろそろ一度休憩するぞー!」
ガイストの首都スパーナを出てから、3時間程。
御者の声が、客車の中へ響いた。
「休憩?」
窓の外を眺めていたアルトが。
振り返る。
「ああ! 馬も休ませなきゃならんからな!」
「おお!」
アルトが。
向かいを見る。
「ログ! ガオン! 休憩だって!」
「…………」
「…………」
「起きろー!」
「聞こえてる……」
ログが。
ゆっくりと目を開ける。
「うるせぇな……」
「ガオン!」
「…………」
「ガオンー!」
「……聞こえている」
ガオンも。
眉間に皺を寄せながら目を開いた。
「二人とも寝起き悪いな!」
「誰のせいで眠いと思ってんだ……」
「?」
「もういい」
ガタゴト。
馬車が。
街道から少し外れ。
ゆっくりと速度を落としていく。
やがて。
開けた場所で停まった。
「よし!」
アルトが立ち上がる。
「降りようぜ!」
「アルトくん」
「ん?」
「まだ完全に停まって――」
ガタンッ。
「うおっ!」
アルトの身体が傾く。
「危ない!」
レテが。
咄嗟にアルトの服を掴んだ。
「おっと……」
「もう!」
「ごめん!」
「さっきも言いましたよね⁉︎」
「今度は大丈夫だと思って!」
「何が違うんですか!」
「ははは!」
「笑い事じゃありません!」
馬車が。
完全に停まる。
「ほら! 今ならいいだろ!」
「はいはい……」
アルトが。
今度こそ外へ降りる。
「んー!」
大きく腕を伸ばした。
「やっぱ外いいな!」
「お前、馬車乗ってる間ずっと外見てただろ」
続いて降りてきたログが。
呆れたように言う。
「見るのと外にいるのは違うだろ!」
「まぁ、それはそうだが」
レテたちも。
次々と馬車を降りてくる。
「結構進みましたね」
レテが。
来た道を振り返る。
ジーアスの街並みは。
もうどこにも見えない。
周囲に広がるのは。
街道と。
緩やかに続く草原。
「スパーナまであとどれくらいなんだろ」
フィリアが呟く。
「おーい!」
ちょうど。
馬へ水を飲ませていた御者が顔を上げた。
「あと半分より、ちょい少ないくらいだ!」
「お!」
アルトが反応する。
「じゃあもう半分以上来たのか!」
「そういうことだな!」
「もうすぐじゃん!」
「いや」
ヒルトが笑う。
「まだ何時間かはかかると思うよ?」
「…………」
「アルト?」
「暇だな」
「さっきまで楽しそうだったじゃん!」
「楽しいけど長い!」
「わがままだなぁ」
「そうだ!」
アルトが。
何かを思いついたように手を叩く。
「身体動かそうぜ!」
「…………」
ログの顔から。
表情が消えた。
「ガオン」
「ああ」
二人が。
同時にアルトから距離を取る。
「え?」
「俺は休憩する」
「奇遇だな。俺もだ」
「なんで⁉︎」
「休憩だからだよ!」
「ちょっとくらいいいだろ!」
「よくねぇ!」
「朝あれだけやっただろう!」
「でも身体固まってない?」
「固まってねぇ!」
「俺も問題ない!」
「二人とも元気じゃん!」
「お前と一緒にするな!」
「ふふっ」
レテが笑う。
「アルトくん」
「ん?」
「せっかくですから、少し歩きませんか?」
「歩く?」
「はい。ずっと座っていましたし」
「おお! いいな!」
「遠くへ行ってはいけませんよ?」
「分かってる!」
アルトが。
レテと一緒に歩き出す。
「…………」
ログが。
その後ろ姿を見送った。
「元気だなぁ……」
「羨ましい限りだ」
ガオンが答える。
「お前、さっきまで寝てただろ」
「寝たから元気になった」
「じゃあ身体動かしてこいよ」
「断る」
「だよな」
その近くでは。
フィリアが背伸びをし。
ヒルトも。
固まった肩を軽く回している。
ユノは。
一人。
街道の先へ目を向けていた。
「…………」
「どうした?」
ヒルトが尋ねる。
「いえ」
ユノが。
いつもの柔らかな笑みを浮かべる。
「スパーナって、どんなところなのかなと思いまして」
「ああ」
ヒルトも。
同じ方向を見る。
ここからでは。
まだその姿は見えない。
けれど。
この街道の先に。
目的地はある。
「もう少しだね」
「はい」
王国祭を目前に控えた国。
スパーナ。
まだ誰も知らない。
その地で何が待っているのかを。
今はただ。
七人で過ごす休暇を楽しみながら。
アルトたちは。
少しずつ。
スパーナへと近づいていた。




