お土産と服屋②
丘を下り、僕たちは再び店の立ち並ぶ通りへと戻ってきた。
さっきまでの静かな丘とは違い、通りには大勢の人が行き交っている。
「まずはお土産から?」
「そうだね。その方がいいかな」
「何買うの?」
「セリオさんのは決めてるよ」
「決めてるの?」
「うん。ピスタチオが好きだから」
「ああ、そういえば好きだったね」
せっかくなら、好きなものを買っていった方が喜んでもらえるだろう。
食べ物を扱う店をいくつか覗きながら歩いていると、店先に並べられた焼き菓子が目に入った。
「あ」
箱に詰められたクッキー。
その中に、砕いたピスタチオを練り込んだものが並んでいる。
「これいいかも」
僕が手に取ると、フィリアも横から覗き込んだ。
「ちょうどいいね」
「うん。日持ちもしそうだし、持って帰るのにも困らないでしょ?」
「いいと思う」
「じゃあ、これにしようかな」
セリオさんの分はこれで決まり。
箱を手にしたところで、もう一人の顔が頭に浮かんだ。
「リオネルさんはどうしようか」
「……そもそも、買うほど仲良かった?」
「うーん……」
言われてみれば。
セリオさんと違って、リオネルさんとそこまで親しいわけじゃない。
「まあ、スパーナで会うかもしれないし」
「……レテに選んでもらえば?」
「なんでレテ?」
「…………」
フィリアが僕を見る。
「何?」
「……なんでもない」
「?」
なんだったんだろう。
首を傾げていると、フィリアが僕の持っている箱を指差した。
「セリオさんと一緒でいいんじゃない?」
「同じので?」
「うん」
「そうしようか」
何が好きなのか分からないものを無理に選ぶより、その方がいいだろう。
僕は同じ箱をもう一つ手に取り、二つまとめて会計を済ませた。
「これでお土産は終わりだね」
「うん」
店を出ると、フィリアが辺りを見回す。
そしてすぐに何かを見つけたのか。
僕の袖を引いた。
「ヒール」
「ん?」
「あそこ」
フィリアが指差した先を見る。
通りの向こうにあったのは、服屋だった。
「…………」
「行こ」
「……はいはい」
楽しそうに歩き出すフィリアの後ろを追う。
僕の服を選んでもらう。
そこまではいい。
問題はそのあとだ。
僕もフィリアの服を選ぶ約束になっている。
嫌なわけじゃない。
ただ。
女の子の服なんて、何を選べばいいのか全然分からない。
「ヒール、早く」
「今行くよ」
まあ。
約束した以上、仕方ないか。
僕は小さく息を吐き、フィリアの後を追って服屋へ向かった。




