お土産と服屋
丘を下り、僕たちは再び店の立ち並ぶ通りへと戻ってきた。
さっきまでの静かな丘とは違い、通りには大勢の人が行き交っている。
「まずはお土産から?」
「そうだね。その方がいいかな」
「何買うの?」
「セリオさんのは決めてるよ」
「決めてるの?」
「うん。ピスタチオが好きだから」
「ああ、そういえば好きだったね」
せっかくなら、好きなものを買っていった方が喜んでもらえるだろう。
食べ物を扱う店をいくつか覗きながら歩いていると、店先に並べられた焼き菓子が目に入った。
「あ」
箱に詰められたクッキー。
その中に、砕いたピスタチオを練り込んだものが並んでいる。
「これいいかも」
僕が手に取ると、フィリアも横から覗き込んだ。
「ちょうどいいね」
「うん。日持ちもしそうだし、持って帰るのにも困らないでしょ?」
「いいと思う」
「じゃあ、これにしようかな」
セリオさんの分はこれで決まり。
箱を手にしたところで、もう一人の顔が頭に浮かんだ。
「リオネルさんはどうしようか」
「……そもそも、買うほど仲良かった?」
「うーん……」
言われてみれば。
セリオさんと違って、リオネルさんとそこまで親しいわけじゃない。
「まあ、スパーナで会うかもしれないし」
「……レテに選んでもらえば?」
「なんでレテ?」
「…………」
フィリアが僕を見る。
「何?」
「……なんでもない」
「?」
なんだったんだろう。
首を傾げていると、フィリアが僕の持っている箱を指差した。
「セリオさんと一緒でいいんじゃない?」
「同じので?」
「うん」
「そうしようか」
何が好きなのか分からないものを無理に選ぶより、その方がいいだろう。
僕は同じ箱をもう一つ手に取り、二つまとめて会計を済ませた。
「これでお土産は終わりだね」
「うん」
店を出ると、フィリアが辺りを見回す。
そしてすぐに何かを見つけたのか。
僕の袖を引いた。
「ヒール」
「ん?」
「あそこ」
フィリアが指差した先を見る。
通りの向こうにあったのは、服屋だった。
「…………」
「行こ」
「……はいはい」
楽しそうに歩き出すフィリアの後ろを追う。
僕の服を選んでもらう。
そこまではいい。
問題はそのあとだ。
僕もフィリアの服を選ぶ約束になっている。
嫌なわけじゃない。
ただ。
女の子の服なんて、何を選べばいいのか全然分からない。
「ヒール、早く」
「今行くよ」
まあ。
約束した以上、仕方ないか。
僕は小さく息を吐き、フィリアの後を追って服屋へ向かった。




