初デート?②
◇
「おはよう」
食卓へ向かうと、ママが笑顔で振り返った。
「ふぁぁ……おはよう」
「おはよう、フィリア」
「おはよ、パパ」
いつもの席へ座る。
ママがコップにリンゴジュースを注いで、私の前へ置いてくれた。
「はい、どうぞ」
「ありがと」
パパは向かいの席で、コーヒーを飲みながら新聞に目を通している。
今朝のご飯は、オートミールにヨーグルトとドライフルーツを混ぜたもの。
ママも私と同じ。
パパだけはパンと目玉焼き、それにソーセージを食べていた。
「…………」
スプーンでオートミールを掬う。
こうやって三人で朝ご飯を食べるのも久しぶりだ。
やっぱり実家は落ち着く。
「フィリア」
「んー?」
「今日はどうするの? お家でゆっくりする?」
「――⁉︎」
スプーンが止まった。
「…………」
どうしよう。
なんて説明しよう……。
「そういえば」
今度はパパが新聞から顔を上げた。
「昨日はパパが遅くなって、一緒に食事できなかったからね」
「う、うん」
「今日の夕飯は一緒に食べよう」
「――⁉︎」
また止まった。
「…………」
た、多分。
夕飯もいらないよね……?
十一時に待ち合わせして。
たまごサンド食べて。
買い物して。
バーベキューもするって言ってたし。
「…………」
「ん?」
ママが私の顔を覗き込んでくる。
「どうしたの? お腹痛いの?」
「え?」
「なんだって⁉︎」
パパが新聞を置いた。
「医者! 医者を――」
「違うよ!」
「違うの?」
「違う!」
なんでお腹痛いだけで医者呼ぼうとしてるの⁉︎
「きょ、今日は!」
「うん」
「今日は?」
二人が私を見る。
「デ……」
「デ?」
「デ……」
出てこない。
違う!
別にデートじゃない!
遊びに行くだけ!
約束してたものを食べに行って、スパーナの買い物するだけ!
「……友達!」
危なかった。
「友達と出掛けてくる! だから夕飯もいらない!」
「あら」
「なんだ、そうなのか」
パパはあっさり頷く。
「寂しいけど、友達は大切にしないとね」
「う、うん!」
助かった!
「そう! 大切にね!」
「楽しんでおいで」
「うん!」
「あら、そうなの!」
「…………」
ママ。
なんでそんな顔してるの?
「どんな子なの?」
「…………」
にやにやしている。
絶対。
何か勘付いてる。
(くそ……勘のいい人だ!)
「え、えっとー……」
ヨーグルトを混ぜながら目を逸らす。
「同期でね」
「うんうん」
「アカデミアから一緒でね」
「へぇー」
「同じ軍で……」
「ああ!」
パパが納得したように頷いた。
「レテちゃん?」
「――⁉︎」
思わず顔を上げる。
「レ、レテじゃない……」
「そうなのか」
パパは少し考えて。
「じゃあパパ、分からないなぁ」
「…………」
なんでちょっと残念そうなの。
「ふーん」
ママの声。
「…………」
見る。
まだ、にやにやしている。
「な、何?」
「別に?」
「絶対なんか思ってる!」
「何にも?」
「ちょっとママ!」
「はいはい!」
ママは楽しそうに笑いながら、自分の食器を持って立ち上がった。
「後でね!」
「後でって何⁉︎」
「さぁ?」
「ママ!」
そのままキッチンへ行ってしまう。
「…………」
絶対バレてる。
「フィリア」
「ん?」
「ドライフルーツ、食べないの?」
「食べるよ!」
「そうか」
パパは何も気づいていないらしい。
「…………」
私は残った朝ご飯を口へ運びながら、時計を見る。
十一時。
噴水広場。
まだ時間はある。
あるけど――。
(……何着てこう)
さっき逃げた問題が。
再び頭の中へ戻ってきた。




