お墓参り
◇ ◇ ◇
ヒルトさんと別れ、僕は一人で墓地へ向かう。
……つもりだったのだけれど。
「…………」
ふと、足を止めた。
(あ、花ぐらい用意した方がいいか)
何も持たずに来てしまった。
別に、あいつらなら気にしないだろうけど。
僕が気になる。
「確か、近くに商店があったな……」
以前来た時の記憶を辿り、来た道を引き返す。
すると。
先ほどヒルトさんが入っていった建物の扉が勢いよく開いた。
「早くしろよー!」
一番に飛び出してきたのは、一人の男の子。
十二歳くらいだろうか。
少し癖のある焦げ茶色の髪に、勝ち気そうな琥珀色の瞳。
細身だけれど、日に焼けた手足には擦り傷がいくつもあって、いかにも外を走り回るのが好きそうな子だ。
「ニカ! 勝手に先に行かないの!」
その後を追ってきたのは、彼より少し年上の女の子だった。
長い栗色の髪を低い位置で一つに結び、落ち着いた青灰色の瞳をしている。
年は……僕とそこまで離れていない。
十六歳くらいかな。
大人びた顔立ちをしているけれど、腰に手を当てて男の子を叱る姿は、どこか姉のようにも見えた。
「だってパチパチ飴三つだぞ! 売り切れたらどうすんだよ!」
「売り切れないから!」
「わかんねぇだろ!」
「もう……!」
その二人に続いて、小さな女の子が出てくる。
「ラズ、ちゃんと手つないで!」
「おかしー!」
「走っちゃダメ!」
七歳くらいの女の子。
肩にかかるくらいの淡い茶色の髪と、大きな緑色の瞳。
その小さな手が、さらに幼い男の子の手をしっかり握っている。
男の子は四歳くらいだろう。
女の子とよく似た淡い茶色の髪。
瞳の色も同じ緑色で、顔立ちまでどことなく似ている。
きょうだいかな。
「サーヤ! ラズが走る!」
「リズ、そのまま手を離さないでね!」
「うん!」
「おかし! おかし!」
「ラズ! 引っ張らないの!」
「…………」
随分と賑やかだ。
さっきまで静かだった道が、一瞬で騒がしくなった。
それにしても。
(ヒルトさん、あの子たちと一緒に暮らしてたのか)
なんだか少し意外だった。
軍にいる時のヒルトさんしか知らない僕には、どうにも想像がつかない。
「ん?」
先頭を歩いていた男の子――ニカと呼ばれていた子が、こちらに気づいた。
「…………」
「…………」
目が合う。
ニカ君が僕をじっと見る。
そして。
「……誰だ?」
「ニカ! 知らない人にそんな言い方しないの!」
「だって知らねぇもん!」
女の子――サーヤさんもこちらを見る。
「すみません。この子、失礼で……」
「いえ、大丈夫ですよ」
僕は笑って首を振る。
「僕はユノ・フェルメル。ヒルトさんと同じ、ガイスト軍の者です」
「ヒルト兄ちゃんの?」
ニカ君の目が、一気に変わった。
「はい」
「じゃあ強ぇの?」
「ニカ!」
「…………」
どうしてヒルトさんの知り合いだと、そこに繋がるんだろう。
「さぁ……どうでしょう?」
僕が笑うと。
ニカ君は、ますます興味深そうに僕を見上げてきた。




