ヒルトの休暇③
「ただい――」
「不審者ぁぁぁぁ!!」
「え?」
声と同時に。
何かが飛んできた。
「ぶっ⁉︎」
顔面に直撃した。
「痛っ……!」
「くらえ! 不審者!」
「ちょ、待って――」
「ニカ! 何してるの!」
奥から慌ただしい足音が近づいてくる。
「だって勝手に入ってきたんだぞ!」
「だからっていきなり攻撃しちゃダメでしょ!」
現れた女の子が、ニカの頭をぺしっと叩く。
「いってぇ!」
「まったく……すみません! 大丈夫です――」
僕を見て。
サーヤの動きが止まった。
「……ヒルト!?」
「やぁ、サーヤ……」
顔を押さえながら片手を上げる。
「……ニカ、痛い」
「…………」
ニカが固まる。
僕の顔をじっと見て。
もう一度見る。
「……ヒルト兄ちゃん?」
「うん」
「…………」
「久しぶり」
「…………」
ニカが手に持っていた棒を、そっと背中に隠した。
「……おかえり」
「先に謝ろうか」
「おかえり!」
「誤魔化さないで」
「おかえりヒルト兄ちゃん!!」
「声を大きくしてもダメだからね」
「ヒルト兄ちゃん!?」
さらに奥から。
今度は幼い声が響いた。
「ヒルにー!!」
小さな影が、ものすごい勢いで廊下を駆けてくる。
「ラズ! 走っちゃダメ!」
その後ろを、リズが追いかけていた。
「ヒルにー!」
「うわっ」
ドンッ、と。
ラズがそのまま僕の腹に飛び込んでくる。
「おっと……」
「ヒルにー! ヒルにー!」
「うん。久しぶり、ラズ」
「もう! ヒルトお兄ちゃんでしょ!」
追いついたリズが息を切らしながら、弟を叱る。
「ヒルにー!」
「だからヒルトお兄ちゃん!」
「ヒルにー!」
「もう!」
「ははは」
変わってないな。
騒がしくて。
うるさくて。
帰ってくると、いつもこんな感じで。
「……ただいま」
僕がそう言うと。
サーヤが少しだけ笑った。
「おかえりなさい、ヒルト」
その言葉に続いて、リズも笑う。
「おかえり、ヒルトお兄ちゃん!」
「ヒルにー!」
「……おかえり」
最後だけ妙に小さな声だったのはニカだ。
「ニカ」
「なんだよ」
「まだ痛い」
「……悪かったって!」




