灼王
ガオンが。
ゆっくりと立ち上がる。
裂けた拳を握り。
全身へ。
再び熱を巡らせていく。
「…………」
その姿を。
スカーは黙って見ていた。
そして。
僅かに。
その口角が上がった。
「……⁉︎」
ガオンの目が見開かれる。
今。
確かに。
父が笑った。
だが。
それを確かめる間もなく。
スカーが右手を前へ出す。
「…………」
ガオンの表情が変わった。
「ラバタ」
「ガニ?」
「来るぞ」
「…………」
ラバタが甲羅盾を構える。
「……勘弁してほしいガニ」
スカーの掌へ。
赤い光が集まり始める。
同時に。
周囲の温度が一気に上がった。
「っ……!」
空気が揺らぐ。
地下の冷えた石壁まで。
熱を帯びていく。
そして。
集まった赤い光が。
強く。
強く輝いた。
――次の瞬間。
一振りの霊器が姿を現す。
黒金の長柄。
その先端には。
獅子の頭部を象った重厚な意匠。
大きく開かれた口の奥から。
巨大な湾曲刃が。
牙のように伸びている。
獅子の双眸は赤く灯り。
口内から漏れ出す熱が。
刃を根元から灼いていた。
熱を帯びるほど。
その刃は赤熱し。
まるで。
獅子そのものが炎の牙を剥いているようだった。
「……あれが」
ラバタが呟く。
「あぁ」
ガオンは目を逸らさない。
「《灼王牙》だ」
獅子座の王。
その力で国を守り。
人々から〝灼王〟と呼ばれる男。
スカー・レオニスの霊器。
「……これからが本番ってわけガニ?」
「さぁな」
ガオンが笑う。
「星纏もしてくるかもな……」
「…………」
ラバタの顔が引きつる。
「……冗談ガニ?」
「はっ!」
ガオンが拳を構えた。
熱が。
さらに身体を巡る。
「上等だ」
真正面から。
父を見る。
「やってやるよ、父上」
その隣で。
ラバタが甲羅盾を構え直す。
「…………」
ガオンが。
口元を吊り上げた。
「火傷するなよ?」
対するスカーは。
《灼王牙》を片手で持ち上げる。
獅子の口内が。
さらに赤く輝いた。
――灼王が。
動く。




