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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
星詠国家ルミナス クーデター編

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呼び出し

ロイドが。


 崩れた木箱を押し退けながら立ち上がる。


「ったく……」


 肩を軽く回す。


「人様の食料庫で好き勝手やりやがって」


「む?」


 カンポスが。


 周囲へ散らばった食料を見る。


「我だけではないだろう」


「俺は吹っ飛ばされた側だよ」


「そうか」


「そうだよ……」


 ロイドが。


 大きく息を吐く。


 そして。


 《蒼淵》を構え直した。


「まぁいい」


「?」


「そろそろ」


 青銀の刃へ。


 霊素を流し込む。


 ――キィィィン……。


 《蒼淵》の輪郭が。


 青白く輝き始める。


「こっちも少し真面目にやるわ」


「ほう!」


 カンポスが。


 二又槍を構える。


「望むところだ!」


「だから嬉しそうにすんなって……」


 ――ダン!!


 ロイドが駆ける。


「む!」


 一気に。


 距離を詰める。


「《蒼斬》!」


 ――シュン!!


 青い斬撃が飛ぶ。


「ならば!」


 カンポスが。


 二又槍を振るう。


「《流盾》!」


 ――バシャァッ!!


 渦巻く水が。


 目の前に集まり。


 盾となる。


 だが。


 ――スパン!!


「⁉︎」


 《蒼斬》が。


 水の盾を真っ二つに切り裂いた。


「おお!」


 カンポスが横へ跳ぶ。


 斬撃は。


 そのまま背後の壁へ。


 ――スッ。


「…………」


 綺麗な切断線。


 直後。


 壁の一部が。


 ゆっくりとずれ落ちる。


「水まで斬るか!」


「形作ってんならな」


「面白い!」


「俺は面白くねぇよ!」


 カンポスが。


 二又槍を前へ突き出す。


「《穿雫》!」


 無数の水滴が。


 周囲へ浮かぶ。


 ――バババババッ!!


「チッ!」


 弾丸のような水滴が。


 ロイドへ殺到する。


「同じのは――」


 《蒼淵》を。


 横薙ぎに振るう。


 ――シュバッ!!


「二度も食らわねぇよ!」


 水滴が。


 次々と切り裂かれる。


「むぅ……」


 カンポスが。


 僅かに眉を寄せる。


「では!」


 手を掲げる。


「《千流槍》!」


 頭上。


 無数の水が集まり。


 鋭い槍へ姿を変えた。


「また数かよ……!」


「降れ!」


 ――ドドドドドドド!!


「チッ!」


 ロイドが駆ける。


 右。


 左。


 次々と。


 水の槍が床へ突き刺さる。


「…………!」


 その時。


 横。


 水流が走った。


(来る!)


 二又槍が。


 水流へ乗り。


 一直線に迫ってくる。


 ――ガギィン!!


「ぐっ!」


 《蒼淵》で受け止める。


「捕らえたぞ!」


「……またそれか」


「《螺旋流》!」


 ――ゴォォォォ!!


 二又槍を包む水流が。


 激しく渦を巻く。


 槍そのものが。


 高速で回転し始めた。


「くっ……!」


 ――ギャリリリリ!!


 《蒼淵》との間で。


 激しく火花が散る。


「さっきは飛ばされたが……」


「む?」


 ロイドが。


 《蒼淵》へ霊素を流し込む。


 ――キィィィン!!


「今回は違うぜ」


 青白い光が。


 さらに強くなる。


「斬る」


 ――ザン!!


「⁉︎」


 《蒼淵》が。


 渦巻く水流そのものを切り裂いた。


 ――バシャァッ!!


「おおっ!」


 《螺旋流》が崩れる。


「もらった」


 ロイドが。


 一気に踏み込む。


「む!」


 横薙ぎ。


 カンポスが。


 二又槍を立てる。


 ――ギィィン!!


「ぐっ……!」


 霊器同士が。


 真正面からぶつかる。


 その瞬間。


 ――ピキッ。


「む?」


 カンポスの二又槍。


 刃の片方へ。


 細い切れ込みが入った。


「…………」


「次はもっと深くいくぞ」


「我の霊器を……」


 カンポスが。


 切れ込みを見る。


 そして。


「やるな!」


「だから嬉しそうに――」


 ロイドが踏み込む。


「すんなって!」


 ――ギィン!!


 もう一撃。


「ぬぅ!」


 カンポスが後退する。


 ――ザザッ。


「ならば!」


 床へ。


 二又槍を突き立てた。


「《潮廻(しおめぐり)》!」


 ――ゴォォォォォ!!


「おいおい!」


 床へ広がっていた水が。


 一斉に流れ始める。


 激しい水流が。


 食料庫を駆け巡る。


「場所考えろよ!」


 ロイドが。


 積まれた木箱へ跳び上がる。


「そこだ!」


「⁉︎」


 足元。


 水流の中から。


 一本の水槍。


 ――ズドン!!


「っと!」


 横へ跳ぶ。


 二本。


 三本。


 続けざまに。


 水槍が伸び上がる。


「数多すぎんだろ!」


「まだまだ!」


「…………!」


 正面。


 水流に乗ったカンポスが。


 二又槍を構え。


 猛スピードで迫る。


「ロイド!」


「気安く呼ぶな!」


「参る!」


 ――ギィィン!!


 《蒼淵》。


 二又槍。


 再び。


 正面衝突。


「ぐっ!」


「ぬぅ!」


 押し合う。


 水流が。


 カンポスの背を押す。


「…………」


 ロイドの足が。


 僅かに下がった。


「面倒な水だな……」


「我の水は強いぞ!」


「見りゃ分かるよ!」


 《蒼淵》へ。


 さらに霊素を込める。


 青白い光が。


 刃へ集中する。


「悪いが」


「む?」


「そのまま押してると――」


 刃が。


 二又槍へ食い込む。


「槍、斬れるぞ」


「それは困る!」


 カンポスが。


 慌てて後方へ跳ぶ。


「逃がすか!」


 ――ダン!!


 ロイドが追う。


 《蒼淵》を。


 振り抜こうとした。


 その時。


「む?」


「……あ?」


 カンポスが。


 突然。


 動きを止めた。


「…………」


 顔を横へ向ける。


「おい」


「…………」


「どうした」


 数秒。


 何かを聞くように。


 黙っていたカンポスが。


 小さく頷く。


「呼び出しだ」


「は?」


「我は行かねばならぬ」


「ちょっと待て」


「む?」


「今いいところだっただろうが」


「そうだな」


「そうだなじゃねぇよ……」


 カンポスが。


 二又槍を持ち上げる。


「では、ロイド」


「あ?」


「我はこれで失礼する!」


「おい!」


 ――バシャァァァン!!


「⁉︎」


 床を流れていた水が。


 一斉に跳ね上がる。


「チッ!」


 ロイドが。


 《蒼淵》を振るう。


 ――シュン!!


 目の前の水を。


 一息に斬り裂く。


「…………」


 だが。


 その向こう。


 カンポスの姿は。


 すでになかった。


「……は?」


「…………」


 暫く。


 カンポスがいた場所を見つめる。


「なんなんだよ……あいつ」


 《蒼淵》を下ろす。


「勝手に始めて」


 頭を掻く。


「勝手に帰りやがった……」


「…………」


 追うべきか。


 僅かに迷う。


 だが。


 周囲には。


 倒れたピシエル族。


 その奥には。


 錨のような霊器を握ったまま。


 意識を失っている族長。


「……チッ」


 ロイドが。


 しゃがみ込む。


「こっちが先か」


 もう一度だけ。


 カンポスが消えた方を見る。


「ったく……」


 大きく息を吐いた。


「また仕事増えやがった」

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