主犯②
だが。
ガルドは続ける。
「ただ……」
「?」
「俺は、各族長が自主的に国を裏切ったとは思えない」
「どういうことだ?」
ガルドが。
ゆっくりと息を吐く。
「ヴィルネの族長は、ナーラ様を心酔している」
「…………」
「王家に刃を向ける理由がない」
「なら、ピシエルは?」
「ピシエルは争い事を好まない」
ガルドが。
僅かに首を振る。
「自分達からこんな騒ぎを起こすような一族ではない」
「なるほどな……」
「カプリスは……」
「…………」
少しだけ。
間が空いた。
「まぁ」
ガルドが眉を寄せる。
「あり得なくはないな……」
「そこはあるのかよ」
「カプリスだからな」
「……どういう一族なんだよ」
ロイドが。
呆れたように頭を掻く。
そして。
「じゃあ、スコルネは?」
「…………」
ガルドの表情が。
僅かに険しくなる。
「スコルネ族は、長きに渡りレオニスに重宝されてきた」
「重宝?」
「あぁ」
「医学だけではない」
ガルドが。
天井を見上げる。
「薬学に関する知識も豊富で、政にも強い影響力を持っている」
「…………」
「今の立場を捨ててまで、クーデターを起こす理由がない」
ロイドが。
顎へ手を当てる。
「つまり?」
「クーデターを起こして失うものはあっても」
ガルドが。
静かに言う。
「得るものは、ほとんどない」
「…………」
ヴィルネ。
ピシエル。
スコルネ。
少なくとも。
ガルドの知る限りでは。
積極的に王家へ反旗を翻す理由が見当たらない。
「じゃあ……」
ロイドが。
ガルドを見る。
「そいつらにも、お前みたいに何か事情があるってことか?」
「可能性は高い」
「お前は?」
「…………」
ガルドの拳が。
ゆっくりと握られる。
「親父」
「…………」
「お袋」
「タウルスの仲間達」
一度。
歯を食いしばる。
「全員、毒を盛られた」
「毒?」
「あぁ」
「解毒剤が欲しければ、ナーラ様を連れてこい」
「そう言われた」
「…………」
ロイドの目つきが変わる。
「誰にだ?」
「分からない」
「顔は?」
「隠していた」
「名前は?」
「知らない」
「…………」
「使えないなぁ、お前」
「悪かったな」
「で、その毒は?」
「スコルネ族のものだ」
「…………」
ロイドが。
僅かに《蒼淵》を持ち上げる。
「おいおい」
「…………」
「今、スコルネも怪しいと思えないって言ったばっかじゃねぇか」
「だから妙なんだ」
ガルドが。
ロイドを見る。
「スコルネの毒だからといって」
「スコルネ族がやったとは限らない」
「…………」
「まして」
ガルドが。
小さく息を吐く。
「セト族長が、そんなやり方をするとは思えない」
「随分信用してるんだな」
「長い付き合いだ」
「…………」
ロイドが。
暫く黙る。
そして。
大きく頭を掻いた。
「……なるほどなぁ」
「?」
「参加してる連中にも事情がある」
指を一本立てる。
「族長達の一部は人質」
二本目。
「タウルスは毒で脅迫」
三本目。
「しかも、その毒を作れる一族までクーデター側」
「…………」
「なのに」
ガルドを見る。
「肝心の主犯は分からない」
「……あぁ」
「はぁぁ……」
ロイドが。
盛大なため息を吐いた。
「めんどくせぇ……」
《蒼淵》を下ろす。
「ログと姫が無事なら」
崩れた通路の先を見る。
「あいつらは後回しだ」
「…………」
「こっちはこっちで」
ロイドが歩き出す。
「このふざけたクーデターの頭を探す」
「そうか」
「お前はそこで寝てろ」
「言われなくても動けない」
「なら大人しくしてろ」
数歩進み。
ロイドが振り返る。
「あと」
「?」
「死ぬなよ」
「…………」
ガルドが。
僅かに笑った。
「善処する」
「頼むわ」
ロイドは。
今度こそ背を向けた。
「これ以上、仕事増やされたらたまんねぇからな」




