主犯
「なんだこりゃ……」
そこには。
明らかな戦闘の跡が残っていた。
地面は大きく剥がれ。
土と岩が山のように積み上がっている。
柱は何本も折れ。
壁も砕かれ。
至るところに。
血が飛び散っていた。
「…………」
ロイドの表情が変わる。
「……チッ」
周囲を見回す。
「ログ‼︎」
返事はない。
「…………」
「クソが!」
さらに奥へ進む。
「ログ! 返事をしろ!」
それでも。
返事はない。
その時。
「ログなら、もうここにはいない」
「⁉︎」
ロイドが。
即座に《蒼淵》を構えた。
ログではない。
知らない声。
「誰だ……?」
視線だけを動かす。
「動くんじゃねぇぞ……」
「ふっははは」
声の主が。
小さく笑う。
「安心しろ」
「…………」
「動けんよ」
ロイドが。
声のする方へゆっくりと進む。
「俺は――」
瓦礫の向こう。
「ガルド・タウルスだ」
「…………⁉︎」
ロイドが。
《蒼淵》を構えたまま足を止める。
「お前……」
見覚えがある。
「あの時の……」
そこには。
床へ仰向けに倒れた。
大男。
全身は傷だらけ。
服も破れ。
まともに立てる状態には見えない。
「…………」
ガルドが。
僅かに顔だけをロイドへ向けた。
「安心しろ」
「?」
「ナーラ姫もログも、生きてここを出ていった」
「…………」
ロイドの右手が。
僅かに握られる。
(よし!)
だが。
表情には出さない。
「お前」
《蒼淵》を下げずに。
「タウルスの族長の倅か」
「あぁ」
「ログとナーラ姫はどこ行った」
周囲を見る。
「それと」
崩れた柱。
抉れた地面。
砕けた壁。
「ここの有様はなんだ」
「俺とログで戦ってな……」
ガルドが。
苦笑する。
「負けたよ……」
「…………」
「ログはナーラ姫に担がれて、どこかに行った」
「姫が?」
「あぁ」
「おそらく、治療するつもりだろう……」
「…………」
ロイドが眉を寄せる。
「姫が……治療?」
「ふっ……」
ガルドが。
僅かに笑う。
「面白いやつだった」
「……そうかい」
ロイドが。
《蒼淵》を少しだけ下げる。
「なら聞く」
「…………」
「このクーデターの主犯は誰だ」
ガルドの表情が。
少し変わる。
「それと」
「?」
「お前の父親や、他の族長達はどこに行った」
「…………」
しばらく。
ガルドは黙っていた。
やがて。
ゆっくり口を開く。
「親父や……他の族長達は」
拳を握る。
「人質になっている」
「…………!」
「もっとも」
ガルドが。
天井を見る。
「ヴィルネ」
「…………」
「カプリス」
「ピシエル」
そして。
「スコルネの族長は」
一度。
息を吐く。
「クーデターに参加している」
「…………」
ロイドが。
目を細めた。




