急用
パイルは。
土煙の向こうを見ながら。
小さく苦笑した。
「これは……どうしようかな」
「…………」
トンキーが。
ゆっくりとこちらへ顔を向ける。
「喋る気になりましたか?」
「…………」
パイルが。
深く息を吐いた。
「はぁ……」
そして。
空を見上げる。
「妻と子に会いたい……」
「喋る気になりましたか?」
「さっきからそればっかだね……」
パイルが。
困ったように笑う。
「トンキー君だっけ?」
「はい」
「…………」
《風穴》を。
ゆっくりと持ち上げる。
「今から僕は」
トンキーへ向ける。
「君を倒すつもりでやる」
「はい」
「自分で言うのもなんだけど」
周囲の風が。
少しずつ。
《風穴》へ集まり始める。
「これからやることは、人に向けるものじゃないんだよ」
「はい」
「だから」
パイルが。
真っ直ぐトンキーを見る。
「今のうちに引いてくれない?」
「…………」
トンキーが。
首を傾げる。
「喋る気になりましたか?」
「…………」
数秒。
沈黙。
「そうかよ……」
パイルの笑みが消える。
――ゴォォォォ……。
周囲の風が。
一気に《風穴》へ集まっていく。
「じゃあ――」
「……あ」
「?」
トンキーが。
突然。
何かに気付いたように顔を上げた。
「急用が出来ました」
「……は?」
「失礼致します」
「ちょっ――」
――ダン!!
トンキーが。
建物の壁へ飛び移る。
そのまま。
一度。
二度。
軽々と屋根を蹴り。
あっという間に。
姿を消した。
「…………」
パイルは。
《風穴》を構えたまま。
しばらく。
動かなかった。
「……なんだったんだよ」
集めていた風を。
ゆっくりと解く。
「…………!」
そして。
すぐに。
リアスの方へ駆け寄った。
「リアス!」
砕けた地面。
その中心。
荊に引き裂かれ。
全身をズタズタにされたリアスが。
横たわっている。
「これは……」
パイルの顔が引きつる。
「ひどいな」
「あの野郎……」
「うわっ!」
パイルが。
思わず一歩下がる。
「生きてた!」
「死ぬかよ!」
「いや、その状態なら普通は心配するよ!」
「うるせぇ……」
リアスが。
顔をしかめながら。
息を吐く。
「で」
パイルが。
その場にしゃがむ。
「どうするの?」
「…………」
リアスが。
ぼんやりと空を見る。
「あー……」
そして。
大きく息を吐いた。
「冷めちまった」
「……そう」
「ん」
「?」
リアスが。
片腕を差し出す。
「…………」
パイルが。
その腕を見る。
「いいのかい?」
「あぁ」
「…………」
「どっち道」
リアスが。
僅かに身体を動かそうとする。
「動かねぇよ」
「……あぁ」
そこで。
パイルも気付く。
腕。
脚。
関節。
いくつかが。
あり得ない方向へ曲がっていた。
「はぁ……」
パイルが。
深く息を吐く。
「重症だね」
「見りゃ分かる」
「その元気があるなら大丈夫そうだけど」
「はっ」
パイルが。
腰から捕縛用の腕輪を取り出す。
そして。
リアスの腕へ。
――カチッ。
「…………」
「これでいい?」
「あぁ」
「ずいぶん素直だね」
「今はな」
「怖いこと言わないでよ」
リアスが。
薄く笑う。
「なぁ」
「ん?」
「またやろうぜ」
「やらないよ」
「即答かよ!」
「当たり前でしょ」
パイルが。
困ったように笑った。
◇
救護所外の戦い。
パイル・ヤンギル対リアス・カプリス。
リアス――
戦意消失。




