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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
星詠国家ルミナス クーデター編

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割り込み③

「くっ……!」


 ――ドドドドドッ!!


 《風壁》へ。


 無数の《樹槍》が突き刺さる。


 風が。


 次々と槍の軌道を逸らしていく。


 だが。


「っ!」


 ――ザシュッ!!


「ぐっ……!」


 一本。


 肩を掠める。


 続いて。


 ――ザッ!!


「っ……!」


 脇腹。


 さらに。


 太腿。


 全ては防ぎきれない。


 鋭い根が。


 次々とパイルの身体を掠めていく。


「はぁ……はぁ……!」


 どうにか。


 致命傷だけは避けた。


「…………」


 トンキーが。


 静かにパイルを見る。


「話す気にはなりましたか?」


「…………」


 パイルが。


 傷口を押さえながら笑った。


「……知らないものは話せないね!」


「…………」


 トンキーの眉が。


 僅かに動く。


「……チッ」


「…………」


「…………」


 パイルが。


 目を瞬いた。


「今、舌打ちしたよね?」


「…………」


「したよね?」


「仕方ありませんね……」


 トンキーが。


 片手を上げる。


「もう少し痛めつけ――」


「うっ⁉︎」


 ――ブォン!!


「うぉらぁ!!」


 横から。


 リアスが飛び込んできた。


「こらぁ!!」


 引き千切られた木の根が。


 周囲へ飛び散る。


「死ねぇ!!」


 リアスが片手を地面へつく。


 身体を大きく回転させ。


 《征蹄》を纏った脚を。


 トンキーの顔面へ叩き込んだ。


 ――ドゴォォン!!


「…………!」


 直撃。


 トンキーの身体が。


 勢いよく吹き飛ぶ。


「よし!」


 パイルが声を上げる。


 だが。


「…………」


 吹き飛ばされたトンキーは。


 空中で。


 くるり。


 一度。


 身体を回転させた。


 そして。


 ――タッ。


 建物を囲う塀へ。


 両足で着地する。


「助かった!」


 パイルが。


 リアスを見る。


「…………」


 だが。


 リアスは笑っていなかった。


「……いや」


「?」


「浅い」


 リアスが。


 塀の上を見る。


「あいつ」


 口角が。


 ゆっくりと上がる。


「当たる瞬間に自分から飛びやがった」


「…………!」


「蹴りの威力をまともに受ける前に、後ろへ逃がしやがったんだ」


「そんなことまで……」


「はは……」


 リアスの笑みが。


 また。


 深くなる。


「おい」


「…………」


 トンキーを見る。


「お前も相当強いな?」


「…………」


 トンキーは。


 塀の上から飛び降りた。


 だが。


 ただ落ちるのではない。


 身体を軽々と回転させ。


 ――タッ。


 音もなく着地する。


「…………」


 肩についた土埃を。


 手で二度。


 丁寧に払う。


「……あなた」


「ん?」


 トンキーが。


 顔を上げた。


「邪魔ですね」


「…………」


 先ほどまでと。


 変わらぬ丁寧な口調。


 だが。


 その声だけが。


 僅かに低い。


「引き千切りますよ?」


 首を傾げる。


「糞虫が」


「…………」


 パイルの顔が。


 引きつった。


「こっわ……」


「はははは!」


 リアスは。


 逆に嬉しそうに笑う。


「いいねぇ!」


 曲刀を構える。


「そうこなくちゃなぁ!!」


「…………」


 トンキーが。


 片手を地面へ向ける。


「――《荊棘(いばらおどろ)》」


 ――ズドドドドッ!!


「おっ⁉︎」


 地面から。


 棘だらけの蔓が。


 一斉に噴き出した。


「っと!」


 リアスが空を踏む。


 ――ダン!!


 上へ。


「危ねぇ!」


 だが。


「――《樹鞭乱舞》」


「は?」


 ――バババババッ!!


「おいおい……!」


 地面から伸びた根が。


 鞭のようにしなり。


 四方八方からリアスへ襲いかかる。


「マジかよ!」


 ――カツン!!


 空を蹴る。


 一本。


 躱す。


 ――ダン!!


 二本目。


 曲刀で弾く。


 ――ギィン!!


「っ!」


 三本。


 四本。


 五本。


 右。


 左。


 上。


 下。


「ははっ!」


 それでも。


 リアスは笑っている。


「面白ぇじゃねぇか!」


 空を踏み。


 無数の根の間を駆け抜ける。


「…………」


 トンキーが。


 そんなリアスを見上げる。


「では」


 片手を。


 横へ振った。


「――《剛樹一閃》」


「……あ?」


 ――バキバキバキバキ!!


 地面が。


 大きく割れる。


「⁉︎」


 そこから。


 今までとは比べ物にならない。


 巨大な一本の樹木が伸び上がった。


 太い。


 硬い。


 まるで。


 巨大な棍棒。


 それが。


 一気に横薙ぎに振るわれる。


「おいおい――」


 リアスが。


 空を蹴ろうとする。


「これは……!」


 ――ドゴォォォォォン!!


「ごっふ!!」


 避けきれない。


 巨大な樹木が。


 リアスの脇腹へ直撃した。


「がっ……!」


 身体が。


 大きく弾き飛ばされる。


「リアス!」


 パイルが声を上げる。


「ぐ……っ!」


 空中。


 体勢を立て直そうとした。


 その瞬間。


 ――シュルルルル!!


「⁉︎」


 足。


 腕。


 胴。


 先ほど躱したはずの《荊棘》が。


 いつの間にか。


 周囲を取り囲んでいた。


「おい!」


 棘だらけの蔓が。


 一斉にリアスへ絡みつく。


「離せ!」


 ――ギチギチギチ!!


「ぐっ……!」


 身体を締め上げる。


 棘が。


 装甲の隙間へ食い込んでいく。


「この野郎……!」


 リアスが力を込める。


 だが。


 その前に。


 トンキーが。


 手を振り下ろした。


「…………」


 ――ドォォォォン!!


「がぁっ!!」


 《荊棘》に捕らえられたまま。


 リアスの身体が。


 地面へ叩きつけられた。


 石床が。


 大きく砕ける。


「…………!」


 パイルが。


 思わず息を呑む。


 土煙の向こう。


 トンキーは。


 乱れた外套を整えながら。


 何事もなかったように。


 静かに立っていた。

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