割り込み②
(いつからいた……?)
気配すら。
感じなかった。
「お取り込み中のところ、大変申し訳ありません」
男は。
二人の視線など気にも留めず。
丁寧に頭を下げた。
「私、トンキーと申します」
「…………」
「……おい」
リアスが低い声を出す。
「はい?」
トンキーが。
リアスへ顔を向ける。
「何でしょう――」
――ギィン!!
「……!」
曲刀が。
トンキーの首へ叩き込まれていた。
「…………」
「……‼︎」
リアスの目が見開かれる。
確かに斬った。
刃は。
首へ直撃している。
だが。
「なんだぁ……?」
血が出ていない。
傷すら。
ない。
「てめぇ……」
トンキーは。
自分の首へ手を添えた。
「…………」
軽く触れ。
何事もなかったように手を下ろす。
「これは……」
パイルの表情が変わる。
(この異常な硬さ……)
以前。
軍で共有された情報が。
頭を過ぎた。
「人喰らい……⁉︎」
「…………」
トンキーが。
僅かにパイルへ視線を向ける。
だが。
すぐに本題へ戻った。
「私、探し物をしていまして」
「は?」
「お二人にお尋ねしたいことがございます」
首を。
僅かに傾ける。
「――エーテルというものに、お心当たりは?」
「…………」
パイルの目が。
僅かに揺れた。
「……ふざけんなコラァ!!」
――ダン!!
リアスが。
空を踏み抜く。
「人の戦いに割り込んできて何言ってやがる!!」
《征蹄》へ。
蓄えられた力が集まる。
「潰れろぉ!!」
真上から。
トンキーの頭を踏み抜く。
その寸前。
――ズドォン!!
「⁉︎」
地面を突き破り。
巨大な木が。
突如として伸び上がった。
――ドガァァン!!
「ぐっ!」
リアスの《征蹄》が。
木の幹へ叩き込まれる。
「…………⁉︎」
だが。
折れない。
大きく揺れただけ。
幹には。
僅かな亀裂しか入っていなかった。
「硬ぇな‼︎」
「ふむ……」
トンキーが。
ゆっくりとリアスへ向き直る。
「先ほどから、話が進みませんね」
「何ぃ?」
「失礼致します」
――ズズズズズ!!
「……あ?」
リアスの足元。
地面が。
大きく盛り上がった。
「なんだぁ⁉︎」
――バキバキバキ!!
無数の木の根が。
石床を突き破る。
「おい!」
一本。
二本。
腕。
脚。
胴。
「離せ!!」
無数の根が絡みつき。
リアスの身体を。
その場へ縛り付けた。
「くっ……!」
――ミシミシッ!!
「ふんっ!!」
リアスが力を込める。
だが。
「なんだこいつ……!」
根は。
簡単には千切れない。
トンキーは。
暴れるリアスを見上げる。
「では」
変わらぬ口調で。
「もう一度、お聞き致します」
「…………」
「エーテルというものに、心当たりは?」
「…………!」
その言葉に。
パイルの表情が。
ほんの僅かに変わった。
(エーテル……)
聞いたことがある。
(確か……)
ヴォルグでの一件。
アルトが単独で施設へ侵入した際に提出された報告書。
その中に。
(そんな名前があった……!)
「…………」
「……おや?」
「!」
トンキーが。
パイルを見る。
「あなた」
僅かに。
首を傾げた。
「何かご存知のようですね?」
「いや……」
パイルが。
表情を崩さないようにする。
「知らな――」
「では、どこにあります?」
「⁉︎」
声が。
目の前から聞こえた。
「…………!」
いつ動いた?
先ほどまで。
リアスの前にいたはず。
なのに。
トンキーの仮面が。
パイルの目の前にある。
「どこにあります?」
また。
首を傾げる。
「知らないよ!」
パイルが反射的に右腕を突き出す。
《風穴》の杭が。
トンキーの腹部へ迫る。
「《風杭》!」
――ドン!!
「…………!」
トンキーが。
初めて大きく後方へ跳んだ。
――ザッ。
「…………」
着地。
白い外套が。
僅かに揺れる。
「避けた……」
パイルが《風穴》を構える。
「君……」
目を細める。
「人喰らいだろう?」
「よくご存知で」
否定しない。
驚きもしない。
トンキーは。
ただ丁寧に答えた。
「それで」
「…………」
「エーテルはどこです?」
「さぁーね!」
《風穴》を向ける。
「《風砲》!」
――ドォン!!
風の砲撃が。
一直線にトンキーへ向かう。
「…………」
トンキーが。
小さく息を吐いた。
「……仕方ありませんね」
――ズズッ。
地面が。
再び動く。
「?」
「場所さえ聞き出せれば」
地面の下。
何かが。
一斉に蠢いた。
「喋れればいいですからね」
トンキーが。
片手を上げる。
「――《樹槍》」
――ズドドドドドド!!
「⁉︎」
地面から。
無数の木の根が飛び出した。
その先端は。
槍のように鋭く尖っている。
「うわっ!」
パイルが。
横へ跳ぼうとする。
だが。
「…………⁉︎」
動かない。
「なっ――」
足元を見る。
「いつの間に⁉︎」
足首。
すでに。
細い木の根が。
幾重にも絡みついていた。
「くっそ!」
迫る。
無数の《樹槍》。
「《風壁》!!」
――ゴォォォォォ!!




