割り込み
「ここからが本番だぁ!!」
――ダン!!
リアスが。
何もない空を蹴った。
「っ!」
上。
そう思った瞬間。
――カツン!!
右。
「速っ……!」
さらに。
――ダン!!
左。
星の残光だけを残し。
リアスの姿が。
次々と位置を変えていく。
(これは……)
パイルが《風穴》を構えながら。
視線だけで追う。
(目で追ってたら間に合わないなぁ)
――カツン。
「!」
背後。
振り返るより早く。
「おらぁ!!」
――ブォン!!
「くっ!」
身体を沈める。
頭上を。
リアスの曲刀が通過した。
「まだまだぁ!」
二振り目。
「《風撃》!」
――ドン!!
「おっ!」
風を叩きつけ。
強引に距離を取る。
「危ないなぁ……!」
「避けるじゃねぇか!」
「そりゃ避けるよ!」
パイルが後ろへ跳ぶ。
「斬られたら痛いし!」
「はははは!」
リアスが。
また空を踏む。
――ダン!!
「っ!」
今度は正面。
二本の曲刀が。
左右から迫る。
――ガギィン!!
《風穴》で。
一方を受ける。
「ほらよ!」
「⁉︎」
もう一本。
腹部へ。
「《風壁》!」
――ゴォッ!!
曲刀の軌道を。
風で押し逸らす。
刃先が。
軍服を浅く裂いた。
「危な……!」
「足元がお留守だぞぉ!」
「え?」
――ドゴッ!!
「がっ!」
リアスの膝が。
脇腹へ突き刺さる。
――ズザァッ!!
「っ……!」
パイルが。
地面を滑った。
「なるほどね……」
脇腹を押さえながら。
ゆっくり立ち上がる。
「曲刀だけ見せて」
リアスを見る。
「本命は蹴りか」
「どっちも本命だ!」
「一番困る答えだなぁ……」
「ははは!」
リアスが。
空中へ跳び上がる。
――カツン!!
一歩。
――カツン!!
二歩。
「…………」
パイルの目が。
細くなる。
先ほどから。
リアスは好き勝手に動いているように見える。
だが。
(違う)
《天踏》で。
どこへでも行ける。
それでも。
動くには必ず。
(踏む)
空中に。
足を置く。
その一瞬だけは。
確実に存在する。
「行くぞぉ!!」
――カツン!!
「そこ!」
「ん?」
「《風呼び》!」
――ゴォォォッ!!
「おおっ⁉︎」
空を蹴る直前。
リアスの身体が。
横へ引かれた。
「おっとっと!」
踏もうとしていた場所から。
僅かにズレる。
「なるほど!」
空中で。
リアスが笑う。
「踏む瞬間狙いやがったか!」
「やっと見つけたよ」
パイルが。
口元を上げる。
「君にも止まる瞬間がある」
「ははっ!」
リアスが曲刀を構える。
「なら――」
――カツン!!
「!」
「止まらなきゃいいだけだ!!」
――ダン!!
「いや、それができるの⁉︎」
踏む。
次の瞬間には。
もう次の足場。
――カツン!!
――ダン!!
――カツン!!
踏む時間が。
どんどん短くなる。
「ちょっと待ってよ……!」
「待たねぇ!!」
右。
左。
頭上。
背後。
曲刀の斬撃と。
《征蹄》の蹴り。
二つが。
嵐のように襲いかかる。
「《風壁》!」
――ガァン!!
「《風撃》!」
――ドン!!
「《風呼び》!」
――ゴォッ!!
防ぐ。
逸らす。
引き寄せる。
それでも。
「ぐっ!」
――ザシュッ!!
左腕。
「っ!」
――ドゴッ!!
肩。
少しずつ。
攻撃が通る。
「ははははは!!」
「楽しそうだなぁ、本当に……!」
「楽しいぞ!!」
「僕は全然楽しくないよ!」
パイルが。
大きく後ろへ跳ぶ。
「《風壁》!」
――ゴォォォ!!
リアスとの間へ。
巨大な風の壁を作る。
「またそれかぁ!」
空中。
リアスが。
大きく脚を引く。
「ぶち抜――」
「そこ!」
「あ?」
《風穴》が。
轟音を上げた。
周囲の風を。
一気に吸い込む。
――ゴォォォォ!!
「おっ⁉︎」
作り出した《風壁》そのものが。
《風穴》へ。
飲み込まれていく。
「自分で消した?」
「壁にするだけじゃ」
パイルが。
大きく右腕を引いた。
「君には意味ないからね!」
圧縮。
さらに。
圧縮。
《活火》に強化された身体で。
《風穴》を支える。
「だったら――」
リアスが。
ニィッと笑う。
「撃ってこいよ!」
「言われなくても!」
パイルが。
地面を蹴った。
リアスも。
空を蹴る。
二人の距離が。
一気に縮まる。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
「来いぃぃぃ!!」
――その時。
「――少々」
「?」
「ん?」
聞き慣れない声が。
二人の間へ落ちた。
「よろしいでしょうか」
――スッ。
「…………⁉︎」
白。
二人の視界へ。
突然。
白い外套が入り込んだ。
パイルが。
反射的に《風穴》を止める。
「誰……?」
リアスも。
空中で動きを止めた。
「…………」
そこに立っていたのは。
白い外套を纏い。
顔の半分を仮面で覆った人物。
いつからいた?
どこから来た?
分からない。
ただ。
戦いの真ん中に。
最初からそこにいたかのように。
静かに立っていた。
「…………」
パイルが眉を寄せる。
「いやぁ……」
《風穴》を向けたまま。
小さく息を吐く。
「また厄介そうなのが増えたなぁ……」




